労働新聞 2002年11月15日号 青年

書籍紹介
森住卓著・写真
 (高文研出版社 2000円)

イラク−湾岸戦争の子どもたち
劣化ウラン弾は何をもたらしたか
米国こそ「悪魔の国」だ

大学生 南木 佳史

 米国ブッシュ政権は「大量破壊兵器」開発を口実に、イラクへの攻撃姿勢を強めているが、マスコミでは実際のイラクの状況についてはほとんど報道されない。
 湾岸戦争から11年。この作品は、著者の森住氏が何度もイラクを訪れ、戦争被害、とりわけ最も深刻な被害を受けている子供たちの姿を映し出した、日本ではあまり報道されない貴重なものである。
 イラクは湾岸戦争後、国連の厳しい経済制裁下に置かれたため、国民生活は疲弊した。医薬品、医療機器不足により十分な治療もままならない。栄養失調状態にある子供にとっては下痢や風邪でさえ、死に直結する。
 特に、ガン、白血病、先天性障害が多発し、子どもたちが次々と亡くなっていく…。子供専用墓地にえんえんと広がる小さな土まんじゅう。頭部の欠損した無脳症の赤ちゃん…あまりにも無残で、思わず目を背けたくなる写真もある。
 激戦地となった南部の都市バスラ市内の、ガンによる死亡者数は、戦前の1988年には34人に過ぎなかったのが、戦後5年目の96年には219人と激増、以後も年々増え続け、2000年には586人(17倍!)に達したという。
 このガン・白血病・障害児の激増の原因は、劣化ウラン弾によるものだ。劣化ウラン弾とは、核兵器や核燃料製造の副産物でできた放射能兵器である。米軍は湾岸戦争で初めてこれを使った。
 「究極の対戦車兵器」と呼ばれる劣化ウラン弾。高熱で戦車内部まで貫通し、中の兵士を焼死させるという。この兵器が恐ろしいのは、破壊力だけでなく、放射能が広範囲に拡散することだ。その使用総量は推定300トンから800トン、広島に落とされた原爆の1万4000倍から3万6000倍の放射能原子がペルシャ湾岸地方にばらまかれたという。
 湾岸戦争は、トマホーク・ミサイルをはじめ「ハイテク兵器の実験場」といわれたが、同時に「新たな核戦争」であった。ベトナム戦争での枯葉剤被害と同様、劣化ウラン弾は子や孫にまで耐え難い苦しみを強いるものだ。歴史をたどれば現代最大のテロ国家は米国自身ではないか、と思うのは私だけだろうか。
 日本国内においては、この劣化ウラン弾を95年、米軍が沖縄の鳥島射爆撃場で1520発「誤って」使用したことが明らかになり、付近住民の健康不安、漁業被害が問題となっている。
 湾岸戦争時の劣化ウラン弾の大半が、日独の米軍基地から運び込まれたといわれ、私たちの日本も深くかかわっている。イラク攻撃が開始されれば、また被害者が多発するだろう。それは本当に許されないと思う。
 著者は最後に「イラクの現実を知ったなら、軍事攻撃が何をもたらすか、たやすく理解できるはず。それでも軍事攻撃に踏み切る米国こそ『悪魔の国』と言わざるを得なくなる」という。
 近々、学園祭でこの写真集のパネル展を企画することになり、準備を進めている。米国が「正義」の名の下に行った戦争犯罪を多くの人びとに見て、感じて、考えてもらいたい。
 こんな米国の残虐行為を続かせてはならないと強く思うし、長く続けられるはずがない。世界中でイラク攻撃反対の世論が高まる中、私たち学生の中でもイラク攻撃反対の世論を高めていきたい。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2002