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労働新聞 2017年2月25日号・4面 労働運動

17春闘に際して訴える

森山 康平

 世界経済は、長期の成長停滞と米国の衰退と中国の台頭という構造変化の下で格段と深刻な危機を深めている。危機はいっそう長期化する。
 こうした経済金融危機を背景に、英国の欧州連合(EU)離脱に続き米大統領選でのトランプ氏の「予想外の」勝利に示されるように、上部構造、政治面でも、大きな激変が起きた。グローバル経済の下で貧富の格差拡大が進んだこと、労働者人民の「食い物の恨(うら)み」は深く、米国社会は分裂し、もはや立ちいかなくなった。欧州でも同じような政治危機が起きている。
 トランプ政権は、外交・安全保障でも、経済、金融でも、他国に犠牲を押し付けて歴史を巻き戻し、「偉大な米国の復活」を企んでいる。当面は、保護主義的な通商政策を進め、米国内での雇用創出に力を入れるだろう。
 米帝国主義、世界の支配層は危機のなかで労働者人民に襲い掛かってくる。日本も格好の標的である。
 歴史的な転換点にいることを認識し、闘いに備えねばならない。帝国主義が支配の立て直しに成功するか、それとも労働運動が国際政治に登場できるか。この争いが今後の情勢の発展を決める。とりわけ資本主義先進国における革命政党の建設と労働運動の発展がカギである。
 二〇一七春闘はこうした激変の中で争われる。労働運動は主導的に闘おう。

「トランプ津波」の下での安倍政権の新たな攻撃
 トランプ政権は、短期的には、インフラ投資、法人税と所得税の切り下げ、金融規制の緩和などを進め、国内景気の回復と雇用創出を図る。
 これがうまくいく保証はない。そこでーー
 環太平洋経済連携協定(TPP)からの「永久離脱」、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、特にメキシコから米国への輸出品に高い関税をつけることを狙っている。米国に有利な二国間協定を進める。
 対米貿易黒字国への攻撃を強め、何らかの仕方で米国内の雇用創出か米貿易赤字の削減に協力させる。特に、最大の対米黒字国である中国を狙っている。たとえば、中国からの輸入品に高関税を課す。また、米国からの輸出には法人税をつけないが、輸入には法人税を課す「国境税」の導入などを企んでいる。
 為替をめぐる戦争を仕掛け、基軸通貨国の特権を生かしてむしり取る。相手国を「為替操作国」と判定して損害を与え、米国の利益を確保する。特に中国が狙われているが、日本もそうなる可能性がある。
 米国は、経常収支と政府財政という「双子の赤字」国である。インフラ投資、また減税でも、赤字がさらに膨張する。その負担を、他国と自国民民に押し付ける。
ーーなどである。これも単なる脅かしか、別の譲歩を得るための交渉か。いずれにしても理不尽な要求で、実施されれば貿易戦争、通貨戦争は不可避であろう。世界経済はもっと深刻な危機を迎えよう。
 中長期的には、トランプ政権は、米国が優位性を誇る「金融」を生かして大掛かりな仕掛けをつくり、金融グローバル化を展開し、世界から再度、搾取・収奪することを狙っている。
 トランプ政権の政治でも、米国はうまくいかない。待っているものはより大規模な金融バブルの破たんであろう。トランプ政権は、世界を道づれに地獄への道を突き進む。
 「トランプ津波」に揺さぶられる日本経済、安全保障・外交はどうなるか。
 安倍政権にとって、成長戦略の柱であったTPPがトランプの反対で失敗したことは大きな打撃である。また、NAFTA再交渉も、輸出大企業には痛手だ。日本の自動車をはじめとする多国籍企業は、北米への輸出拠点としてメキシコへの工場を整備・強化している最中だからである。「日本の自動車貿易は不公平」と攻撃された自動車大企業、とりわけトヨタ自動車は大慌てで今後五年間で百億ドル(約一兆一千億円)以上を米国市場に投資し米国民の雇用をつくることを約束させられた。
 また、トランプ大統領が「不当に円安誘導している」と日本を批判したことは安倍政権、黒田日銀にとって深刻である。アベノミクスの主柱が黒田日銀の「異次元金融緩和」であることは周知の事実で、日本の金融政策を名指しで攻撃したことは、日米首脳会談では言及しなかったとはいえ、安倍政権にとって憂慮すべきことであろう。
 安倍政権は日米首脳会談で理不尽な要求を恐れ、沖縄県辺野古への米軍基地建設を進めるための工事再開を強行、米軍負担費用を含むわが国軍事費の増額や役割分担を約束したりしている。また、米国のインフラ整備を中心に「五十一兆円の投資を行い、七十万人の雇用をつくる」など「経済成長イニシアチブ」をわざわざリークした。安倍政権は米国経済の成長と雇用創出のために貢献することを身をもって示した。日米首脳会談は切り抜けたが、新たな経済枠組みをつくることを迫られた。今後、金融・財政・通商など米国は日本への要求をいちだんと強めることになる。また、為替問題は財務当局間で話し合うことになっているが、「為替条項」でも押し込まれたら日本は誰が見ても米国の「金融植民地」となろう。
 日米同盟強化でアジアでの政治的な発言力を高め、勢力圏を構築しようと企む安倍政権にとって、トランプ政権の対日要求を拒むことは到底無理である。わが国支配層には「強い経済と超軍事大国」の米国が必要で、日本が協力するのは当然だと考えているのだろう。
 「戦争を含む乱世」の中で日本は米戦略の鉄砲玉として使われることになる。わが国は安倍政権の下で米国に縛られますます自国の運命を自主的に選択できない情けない対米従属の国になっている。同時に、日本もグローバル経済の下で貧困の蓄積、格差の拡大が著しく進んでおり、グローバル化で切り捨てられ、対米従属政治に不満を持ち、怒る大衆が広範に生まれてきている。独立・自主で平和の日本を望む人たちは、保守層の中にも出てきている。
 欧米に見られるような極右勢力の登場による「打開」ではなく、深く大衆の生活に根差した革命的な政治戦略と結びついた労働運動こそが求められている。
 安倍政権成立から四年余りたったが、安倍首相が豪語した「脱デフレ、経済再生」など奇跡は起きなかった。榊原・経団連会長でさえも、わが国経済は「設備投資の回復基調は緩慢であり、個人消費は横ばえで推移し、内需主導による本格的な成長軌道にのるまでにいたっていない」と白状している。そこに「トランプ津波」が、また地政学的なリスクが襲ってきている。
 安倍政権はどうするのか? 財政危機も迫っている。
 安倍首相は、昨年の「働き方改革実現会議」の中で、今春季賃上げの労使交渉も「ベアを含む昨年並みの賃上げを」と言っている。また政労使協調で「長時間労働の是正、同一労働同一賃金など働き方改革を進めてくれ」と言っている。これに呼応し、榊原会長も「賃上げの勢いをなくしてはならない」と同意している。ただしベアではなく、「年収ベースで」賃上げをやるという。
 安倍政権の狙いは何か?
 長期のデフレ不況、また中国や米国などの海外リスクの影響をあって内需依存の日本経済がうまく回復しないなか、「ベアによる賃上げで個人消費を盛り上げる」ことぐらいしか手がないのであろう。賃上げも、労働者の暮らしをよくしようというのではなく、あくまでも「経済の好循環」を回すことが狙いなのだ。
 日本が米国や欧州のように格差と貧困で苦しむ労働者人民の不満と怒りが爆発しないよう、安倍政治につなぎとめておくことが必要なこと、そのための財界への賃上げ要請であり、「働き方改革」なのである。
 しかし、賃上げにしろ「働き方改革」にしろ、労働者の生存条件を悪化させ、格差を拡大させるシロモノである。まったくのペテンである。
 労働運動を骨抜きにして体制内化を促し、安倍政権の目下のパートナーとする。昨年の安倍と連合会長の昼飯懇談、連合事務局長の自民党本部訪問と茂木政調会長への政策要請、など着々と進んでいる。
 連合中央は民進党が政権を取ることはしばらくないと踏んで、政権党である自民党との関係を密にしている。安倍サイドから見れば、民進党と連合の矛盾をついて、揺さぶっているのだ。
 連合中央指導部は、安倍政権を支える社会的支柱である。
 人口減少社会到来で少子高齢化が進み、生産人口が年々減ってくる。働き方改革、それに「一億総活躍」は女性や高齢者、障害者に目をつけて、労働力として有効活用しようというものである。これも、日本経団連や安倍政権の文書を読むに、国際競争に打ち勝つために、労働生産性を高めることに狙いがあるのだ。
 労働運動は今一七春闘で、こうした安倍政権及び日本経団連など財界の労働者・労働運動への新たな攻撃と闘い、打ち破らねばならない。


大幅賃上げを中心に労働条件改善を求めて闘おう

(1)大幅賃上げを闘い取り、奪われた賃金を取り戻そう

 安倍首相は賃上げを実現したと誇示。本当か? 確かに、民間給与実態調査(国税庁)によれば、平均年間給与額は一三年四百十三万六千円、一四年四百十五万円、一五年四百二十万四千円と微増である。しかし、ピーク時の一九九八年と比べると四四・四万円(九・六%)も減少している。
 また、実質賃金指数(毎月勤労統計調査)を見ると、対前年比で一二年(▲〇・九%)であり、以降、安倍政権成立翌年の一三年(▲〇・九%)、一四年(▲二・八%)、一五年(▲〇・九%)と四年連続のマイナスが続いたのだ。一六年になってやっとプラス〇・七%になった。
 安倍政権成立以降の実質賃金の対前年同月比増減率の推移を見ると、一六年九月は前年比で〇・八%プラスだが、民主党政権下の一二年九月に比べると▲三・八%である。
 現金給与総額の実質賃金指数の推移(一〇年=一〇〇)を見ると、一一年(一〇〇・一)、一二年(九九・二)、一三年(九八・三)、一四年(九五・五)、一五年(九四・六)、一六年(九五・三)と、一〇年時点の賃金水準に戻っていないことが分かる。もう少し長いスパンでみると、実質賃金はこの二十五年間で最低である。ピークの一九九六年度(一一〇・三)と直近の二〇一五年度(九四・八)では一五・五ポイントも低下している。
 安倍首相がいうほど、労働者の賃金は上がっていないのである。
 逆に、労働者の貧困化と貧富の格差が急速に進んだことも見逃せない。「結婚の壁」といわれる年収三百万円以下の労働者は雇用者の六割を占めるに至っている。非正規労働者に限れば、年収二百万円以下が七割も占めている。
 生活が苦しくなるにつれて、貯蓄ゼロ世帯も一二年千三百六十一万世帯(全世帯の二七・九%)から一六年は千七百八十八万世帯(三五・五%)へと急増している。
 貧困が進むと同時に、富裕層上位四十人の資産も、この四年間で一二年七兆六千六百五億円から一六年十四兆五千百三億円と一・九倍化した。日本は今や米国に次ぐ貧困大国で、格差社会になった。金融資産一億円以上所有する富裕者の数は、米国を追い越すまでになっている。
 民間企業はアベノミクスの四年間でしこたま利益を上げている。民間企業の経常利益は一二年第4四半期を一〇〇とすると一六年第3四半期は一六〇・一と一・六倍化した。従業員給与・賞与は一〇〇から九九・七へとマイナスになっている。
 なぜ、貧困が蓄積し、貧富の格差が拡大したのか? それは主にアベノミクスという政策の結果である。
 海外で荒稼ぎする一握りの多国籍企業や金融資産家、投資家は円安による為替差益、株価の高騰、などでボロ儲(もう)けした。逆に、大多数の勤労国民は円安による食料品、原材料、エネルギー関連など輸入物価の高騰で苦しめられた。労働者大多数、商工自営業者、農業者から、黒田日銀の「異次元金融緩和」政策・インフレ政策で持てる者への富の移転が進んだからである。アベノミクスは、大掛かりな収奪政策である。それがこんにちの貧困化と格差社会をもたらした。
 貧困と格差が拡大する中で、労働者が「生活できる賃金をよこせ」と要求し、獲得するまで闘い続けることはきわめて理にかなっている。アベノミクスで奪われた富を奪い返さねばならない。一七春闘をその第一歩として闘いを始めよう。
 まず、連合中央の考え方と方針を検討する。「連合白書」によれば、一七春季生活闘争は、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現を通じて「経済の自律的な成長」「包摂的な社会の構築」「ディーセント・ワークの実現」をめざす闘争ということである。
 神津・連合会長は、組合員の賃金・労働条件の改善だけでなく、社会・経済の構造的な問題解決を図る「けん引役」として積極的に発信・行動し、一七春季生活闘争の運動を展開すると訴えている。税と社会保障の一体改革、超少子高齢化社会、イノベーションのための「人への投資」などが中期的な構造変化への対応ということになる。
 賃金要求を見ると、「一六年並みの二%程度、定昇込みで四%」という要求である。闘い方や戦術配置では「底上げ・底支え」「格差是正」「大手追従・大手準拠などの構造転換」を強く主張している。
 以下、若干だが、連合中央方針への批判である。
 労働者の賃金闘争を軽視していることが第一に指摘できる。連合指導部は普通の労働者の生活を理解しているのか、疑問である。生活の貧しさ、格差拡大で苦しんでいる。労働者の生活の現場に入り、かれらの要求、とりわけ賃金について何を求めているかを把握すべきである。
 第二に、今回に限らないが、賃金要求がきわめて低額であることである。これでは、最初から取るつもりがないと疑われても仕方がない。
 事実、一六春闘では連合本部が「二%程度、定昇込みで四%程度」という要求を決定したが、民間大企業大手労組は賃上げ一%にも満たない「三千円」の要求であった。その結果、半分の千五百円程度にとどまったのである。経団連会員企業の大手でさえも、一六春闘の妥結額は定昇込みで平均七千四百九十七円(二・二七%)賃上げにとどまる。大手の定期昇給は約二%前後であるから、実質的な賃上げ(ベア)は〇・三〜〇・五%と推測できる。この程度のベアを取ることも必要であろうが、要求づくりの段階からもっと本腰を入れて取り組み、「生活できる賃金」を求めて闘う姿勢を指導部は示すべきであろう。
 第三に、「底上げ・底支え」「格差是正」とかいうが、本気でやる気があるのかということである。
 たとえば、一六春闘の評価であるが、連合指導部は「中小労組の闘い取った賃上げ率は大手より高いものがある」といって、「画期的」と評価する。
 中小を含む一六春闘の賃上げ率は、厚生労働省の調査結果を見ると、一・九%である。定期昇給分を除くと〇・二〜〇・三%と推測できる。今回の中小賃金は人手不足の条件のもとで労働者に有利に働いたところが多い。また、若年労働者の不足から「初任給」が引き上げられたことも反映し、それに伴い若者(二十歳代から三十歳代前半)の賃金がいくらか改善されたのに過ぎない。かなり外的な条件に依存しており、団結して闘い取ったといえるのか。
 賃上げ率ではなく、賃金水準から見れば、中小企業の賃金は遠く大手に及ばない。たとえば、製造業輸送用機械器具の従業員規模別現金給与総額を見ると、五百人以上五十四万七千七百十二円、百人〜四百九十九人で四十二万五百九十七円、三十人〜九十九人で三十二万三千四百二十一円、五人〜二十九人で二十八万六千七百五十一円と、かなりの格差があることが分かる。これで中小企業の労働者は人並みに生活できるのか? 連合指導部はもっと本気になって闘うべきであろう。
 逆に、民間大手労組は、「底上げ・底支え」「バリュー・チェーンによる付加価値の公正な配分」を強調するあまり、自分の職場で大幅賃上げ闘争に取り組むことを自己規制しないか懸念される。民間大手は今一七春季生活闘争でも昨年同じ、一%にもならない三千円の超低額要求である。大手労組が先頭に立って高い要求を掲げて賃上げを闘い取ってこそ、下請けや関連労組を含むバリュー・チェーン全体の高い賃上げを実現できる有利な条件を手に入れることになろう。これこそ中小企業、下請け関連企業の賃上げ闘争の「底上げ・底支え」となるのではないか。仲間が手をつないで闘ってこそ、勝利への道が開かれるのではないのか。
 第四に、誰のための・何のための賃上げかがはっきりしていないか、間違っている。安倍首相は、第一義的には「経済の好循環」を回すために、次に労働者の中に評判を高め、安倍への支持を拡大することを狙って、財界に賃上げ要請を行ってきた。決して、労働者の生活向上のためではない。
 では、連合中央指導部はどうであろうか? 「連合白書」は「経済の好循環」という言葉を「経済の自律的な成長」に取り換えている。これは、賃上げの実現で個人消費を促し、経済成長を図るという意味であろう。安倍のいう「経済の好循環」とさほど違いはない。前提になっているのは、生産性三原則である。つまり、労使が協力してイノベーション(技術革新)、現場力強化で労働生産性を高めることで付加価値を増やし、労使協議で「公正な分配」に努めるということである。これは、労働者の生活を人並みに良くすることではなく、企業の付加価値を高めることが優先される。これでは闘えないことは明白である。
 労働現場・職場で団結の力と実力で闘い、生活できる賃金を実現させる以外に道はないのである。
 この点、日本共産党指導下にある全労連が提唱する「社会的賃金闘争」は、きわめて有害である。それは選挙目当ての「署名活動」であり、選挙のための名簿づくりである。これは労働運動ではない。これでは労働者の階級意識や団結力は高まるはずはない。
 第五に、連合が掲げる「包摂的な社会の構築」だが、欧州や米国での階級矛盾の激化、社会の分裂を恐れ、安倍政権に対処を促しているのである。
 最後に、日本経団連など財界は今また新しい「賃金・人事」制度を導入しようとしている。「同一労働・同一賃金」や長時間労働の是正を口実に正規社員の賃金切り下げや非正規化を狙っている。一部の管理・企画部門や高度の技術を有する研究開発部門の労働者や技術者を企業の中核労働者として育成し、高い賃金で処遇する。企業にとってダメな、使い道のない労働者は排除されるか、あるいは非正規労働者に転換され、低賃金が押し付けられる。総額賃金は切り下げられる。「仕事・役割・貢献度」賃金制度が急速に各企業で具体化されている。安倍や財界が企む働き方改革に対応した新たな攻撃である。しかし、連合白書には一言もこのことは出てこない。警戒が求められる。

(2)「働き方改革」の欺まんを打ち破り、誰もが週四十時間働いて人並みに生活できる賃金を闘い取ろう

 安倍政権はアベノミクスの行き詰まりに直面し、「一億総活躍社会」を提唱して打開を図ろうとした。その中心的なカギは「働き方改革」であり、安倍はこれを「最大のチャレンジ」と位置付けている。
 「働き方改革」の目玉は、長時間労働の是正と同一労働同一賃金である。
 「働き方改革実現会議」の第一回会合(一六年九月)は取り組むべき九つのテーマを決めている。それは、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、賃金引き上げと労働生産性の向上、時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正ーーなどである。
 少子高齢化社会の到来で、わが国の人口減少は不可避と予測されている。経済成長を維持し、その上激しい国際競争に打ち勝つにはどうするべきかーー安倍政権は雇用者の四割を占める非正規労働者の存在と高齢者、女性に目をつけ、かれらの力を発揮させ、高い労働生産性を身につけるよう訓練し、安上がりの戦力として使うことを企んでいる。そのためには、かれらの処遇改善が必要であった。
 日本経団連の榊原会長は今年の経営労働政策特別委員会報告の「序文」で人口減少は制約ではあるが、「長時間労働を前提とした従来の働き方の見直し働き方・休み方改革の推進と、多様な人材の活躍促進によって飛躍的な生産性向上を実現する絶好の機会が到来していると前向きにとらえるべきである」と述べている。
 以降、経団連や経済同友会が「働き方改革」の議論をリードして、大枠をつくったのである。その主張は欧州を真似るのはよくない、「日本型同一労働・同一賃金」の制度をつくるという。その趣旨は、「職務内容や仕事・役割・貢献度の発揮期待など、さまざまな要素を総合的に勘案し、自社にとって同一と評価される労働」や「企業に同一の価値をもたらすことのできる労働」に対して「同一賃金」を払うという考え方である。これが「日本型同一労働・同一賃金」というシロモノである。
 経済同友会の提言は、正社員が非正社員に比べてより高い賃金が認められるのは、「転勤・配置換えプレミアム」「残業許容プレミアム」「個人の成果プレミアム」の三つである。この三条件を備えたものが正社員として認められるのだ。さらに、理由なく正社員の方が非正規よりも賃金が高かった分は引き下げるとのことである。
 日本型「同一労働・同一賃金」の裏で、賃金総額の切り下げが意図されていることに警戒しなければならない。
 安倍政権は「ガイドライン」を見ても分かるように、財界と基本的には歩調を合わせている。実現会議で議論されある程度まとまった「日本型同一労働・同一賃金」の考え方は、正規労働者と非正規労働者の間に、キャリア、能力、業績成果で差を設けることを是認していることが最大の問題であろう。
 また、日本の労働者が世界的にも深刻な低賃金に置かれているが、財界から大幅賃上げに逆行する低賃金の押しつけと新たな賃金・人事制度が準備されていることは深刻な問題である。
 長時間労働の是正について。
 電通労働者の痛ましい自殺が暴露したように、わが国労働者は過酷な長時間労働にさらされている。長時間労働の是正などというが、高度プロフェショナル制度や「企画業務型裁量労働制の適応対象の拡大、「多様な働き方の自由」という名の下で限定正社員制度の導入、残業時間の上限規制、など深刻な攻撃が準備されている。断固として闘おう。
 安倍政権が企む解雇の金銭解決など労働法制の改革を阻止しよう! 特に当面は労働基準法の改悪攻撃と闘い、断固阻止しよう。


農民、中小零細業者、青年女性など幅広く連帯して「生活危機突破」「地域経済再生」「独立と平和、国民経済擁護」の旗を掲げて闘おう
 安倍政権は、世界の荒波に揺さぶられ打つ手なしである。トランプ政権は「米国第一」を掲げて、日本に犠牲を押し付けて米国の苦境を打開しようと必死である。新政権の内外政治は日本をさらに揺さぶる。
 すでに、成長戦略の柱に据えたTPPはトランプ新大統領の「鶴の一声」で挫折した。安倍政権にとっては大打撃である。トランプはさらに追い打ちをかけて通商政策、為替・通貨政策で日本の譲歩を迫っている。世界のトヨタでさえ、大慌てである。
 米国の経済面、安全保障外交面での対日要求は強まる。日米通商協定の中に「為替条項」を入れるかがいま注目されている。安倍首相が屈服すれば、日本は誰が見ても「金融的植民地」になる。
 安倍はすでに米国に投資して新たに七十万人の雇用を創出するなどと言う。安倍政権は誰のための政権なのか。
 激動する世界、「トランプ津波」の下で日本が生き延びるにはどうすべきか? 国民の切実な要求が生かされる国民大多数の政権を打ち立て、国の運命を一握りの多国籍企業から国民大多数の手に取り返す以外にない。こうした政権の下でこそ、わが国の進路を独立・自主、アジアの平和と共生、国民経済・国民生活の擁護へと大転換できるのだ。
 安倍政権の「ニセ独立」、欺まん的な内外政治を暴露して、独立をめぐる「二つの道」の争いに勝利して指導権を打ち立て、広範な国民を率いて政治的な統一戦線の形成・発展をめざして闘おう。

 労働運動は賃上げ、雇用など切実な利害のために断固として闘おう。同時に、国の運命に思いを寄せて闘い、また農民、中小零細業者、商工自営業者など幅広く国民各層の生活に関心を寄せ、その要求を支持して闘わねばならない。そうしてこそ指導階級として国民大多数の信頼をえることができる。これは歴史の経験が示すところである。



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