ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2017年9月5日号 2面・解説

民進党代表に前原元外相

 「中福祉・中負担」は成り立たない

  民進党代表選が九月一日に行われ、前原元外相が枝野元官房長官に勝利し当選した。前原氏は「中福祉・中負担」を掲げてアベノミクスの対抗軸になるかのように宣伝し、一部マスコミも評価した。だが、これは不可能な道で、「選択肢」にはなり得ない。何より、日米基軸の枠内にとどまる民進党の限界は明白である。前原新体制が、国民の支持を得ることはない。労働者・労働組合は民進党への期待を捨て、自らの力で闘わなければならない。


 当選した前原代表は、山尾幹事長などの人事に着手、十月十日告示の衆議院三補選(青森四区、新潟五区、愛媛三区)の準備を強化している。
 今回の代表選をめぐっては、「盛り上げりに欠ける」というもっぱらの評価とは別に、一部マスコミは民進党に注文を付けつつも、政策論争に期待し、評価する報道を行った。たとえば、「読売新聞」は「アベノミクス批判が目立った従来の党執行部よりは、具体的と言えよう」などと評価した。

求心力失う中での代表選
 かつては「一強体制」とまでいわれた安倍政権だが、七月の東京都議選での惨敗を前後して支持率が急落した。その背景は、二〇一二年の政権誕生以来のアベノミクスによって国民生活が困窮を深めていることが、最大の基礎である。対米従属の外交・安全保障政策への危機感もある。
 内外の危機の深まりも、安倍政権の行き詰まりの要因である。トランプ米政権による世界支配の「巻き返し策」は、政治・経済・軍事のすべての面で、従属国であるわが国を揺さぶり始めている。
 本来、野党にとっては、有権者の怒りを組織して前進する好機である。
 だが、野党第一党である民進党の支持率は一ケタ台に低迷したままである。都議選では離党者が相次ぎ、旗揚げしたばかりの「都民ファーストの会」に支持をさらわれた。代表選の最中にも離党者が相次ぎ、「解党」の言葉さえ飛び交った。求心力どころか遠心力が働き、さながら「泥船」である。ある世論調査では、「民進党が将来、自民党との間で政権交代可能な政党になると思いますか」という問いに対し、八割以上が「思わない」と答えている。
 財界、支配層からすれば、政権交代はないとしても、一定程度の勢力を持つ野党を維持しておくことが、有権者に幻想を与えて支配を維持する上で、必要なことである。一部マスコミが、注文を付けつつも民進党内の政策論争に「期待」したのは、こうした理由からである。
 このような状況下での代表選は、まさに、民進党の存在意義が問われるものとなった。

国の方向は示されず
 前原代表は就任にあたって「安倍政権に代わる選択肢を示す社会的な使命がある」と繰り返した。では、代表選では「選択肢」が示されたのか。マスコミが持ち上げるような政策議論となったのか。
 前原氏は代表選で、「中福祉・中負担」「オール・フォー・オール(みんながみんなのために)」を掲げ、財源として、消費税率一〇%への引き上げを肯定した。「日経新聞」は「社会保障と税負担をセットで考えていく意欲が感じられた」などと持ち上げた。対する枝野氏は、介護職員、保育士らの賃金増を訴え、当面は消費税増税でなく、財源を国債発行や法人税増税に求めるなどとした。
 歴代政府の政策によって衰亡の危機にある農水産業をめぐっては、まったくといってよいほど議論はなかった。
 外交・安全保障をめぐっては、両氏とも「安倍政権の下での」憲法改正に「反対」しつつ、前原氏は与党との論議に前向きである。自衛隊の存在を明記する「加憲」について、前原氏は、自分が安倍首相よりも「先に主張していた」と繰り返した。
 集団的自衛権行使のための安全保障法制については、両氏とも「廃止」に言及した。だが、旧民主党は安保法制と大差ない「領海警備法案」を国会に提出しており、この問題への明確な説明はなかった。
 共産党を含めた「野党共闘」についても、両氏には違いが見られた。
 危機が深まる時代に国の独立がない限り、外交でも内政でも揺さぶられ、思うに任せない。ゆえに、国の方向、独立こそ肝心な問題なのだが、この議論はまったくなかった。
 自民党と同様に「日米基軸」の枠内の民進党には当然のことではある。社会保障制度などでの細かな政策上の違いはあったとしても、この問題に触れない限り、安倍政権、歴代対米従属政治との対抗軸など、提示できるはずもない。

実質は「低福祉・高負担」
 枝野氏の法人税増税などの主張が、財界、支配層の支持を得られるものでないことは言うまでもない。「ボトムアップ型の党運営」などと言い、代表のリーダーシップを否定するかのように述べていたことも、議員や党員には頼もしくは映らなかったであろう。枝野氏の敗北は、この点で当然でもある。
 では、前原代表の掲げた政策、なかでも「核」となった「中福祉・中負担」は、「選択肢」となり得るのであろうか。
 前原氏、さらに彼のブレーンとされる大学教授が明言しているように、これは消費税増税を前提にしたものである。安倍政権でさえ、経済の先行き不安と国民の批判を恐れて明言を避けたい増税、しかも逆進性が強く、低所得者ほど負担が増える消費映像税をすすんで提案したことになる。現在でさえ、実質賃金の目減りや社会保障制度の負担増などで貧困化し、苦しむ国民からすれば、さらなる増税は「中負担」どころか、ますますの「高負担」である。
 だが、二%の消費税増税を行ったとしても、前原氏のいう「中福祉」でさえも成り立たない。国の累積債務は、国内総生産(GDP)の二倍を超え、先進国中最悪である。安倍政権は国民に対して、毎年、千三百〜千七百億円規模の社会保障制度改悪、負担増を押し付け続けている。
 それでも、財政再建には程遠く、「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化」でさえ容易ではない。財界は安倍政権が「財政再建に熱心ではない」と不満を持っているようだが、膨大な累積債務は、増税や緊縮財政で解消できるようなレベルではない。
 しかも、世界経済は成長鈍化が定着し、米連邦準備理事会(FRB)の資産圧縮、中国など新興諸国の民間債務など、リスクはいくらでもある。
 民進党が政権に就くことは当面ないだろう。前原代表は「日本ファーストの会」などとも野党再編の可能性について含みを残しているが、この道も容易ではない。危機は深く、支配層は、政権交代可能な保守二大政党制をめざす余裕はない。
 民進党におあつらえ向きの、世界や日本があるわけではない。仮に民進党が政権に就けても、内外の危機を打開して「中福祉・中負担」を実現することなど、不可能である。
 結局、前原代表が歩もうとしているのは、事実上、「低福祉・高負担」の道である。だが、労働者をはじめとする国民諸階層が、犠牲の押し付けに黙って耐え続けることはあり得ない。

労働運動の態度が肝心
 本来、労働運動はこのような民進党に期待せず、国民諸階層の先頭に立ち、安倍政権の悪政と闘い、打ち倒して、国民生活を守らなければならない。
 議会内与党が政権への対抗軸を示せるとすれば、独自の努力に加えて、こうした闘いとの結びつきがあって初めて可能となる。
 だが、連合を構成する単組は、自民党と大差ない民進党を相変わらず支持し続けている。
 二〇一九年の参議院選挙で、自労組の組織内候補を民進党比例区から当選させることに汲々(きゅうきゅう)としているありさまも見られる。
 連合中央、神津指導部にいたっては、消費税増税に公然と賛成しているだけではない。安倍政権との取引を強め、労働基準法改悪に一時は賛成する裏切りを演じた。
 労働者・労働組合は、民進党への幻想を捨てるにとどまらず、要求による闘いを強めると同時に、自らの政党を育てなければならない。先進的労働者、労働組合活動家の奮闘は、ますます重要になっている。(O)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2017