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2017年4月5日号 2面・解説

南スーダン派遣部隊が終了へ

対米追随の派兵が破綻、撤収直ちに

 安倍政権は三月十日、国家安全保障会議(NSC)を開き、南スーダン国連平和維持活動(PKO)「国連南スーダン派遣団(UNMISS)」に派遣している陸上自衛隊を五月末までに終了することを決めた。米国はスーダンの原油資源と地政学的重要性に目を付け、さらに中国をけん制する意図でUNMISSを組織した。安倍政権は派遣自衛隊に「駆けつけ警護」任務を付与し、米国を支えている。だが、現地情勢のいちだんの悪化、「日報」隠しの発覚などで撤収に追い込まれた。安倍政権の撤収決定は、対米追随の海外派兵が破綻したことにほかならない。五月まで待たず、自衛隊の即時撤退を求めて闘わなければならない。


 南スーダン現地は昨年七月以来、内戦が激化している。自衛隊員が一時拉致されるなどの深刻な事態である。だが、自衛隊統幕幹部は「自衛隊宿営地近傍で発砲事案が発生」「宿営地を狙った襲撃・砲撃も否定できない」などの記述がある「日報」を隠ぺい、安倍政権はあくまで「治安悪化は(撤収の)原因ではない」との態度に終始している。
 「撤収」決定について、野党、とくに共産党は「隠ぺい」の追及がほとんどで、自衛隊派兵の狙いに対する暴露はほとんどない。

英植民地支配のツケ
 南スーダンで続く内戦は、部族・宗教対立の面もあるが、英国による植民地支配が大きな影響を与えている。
 英国は、イスラム教徒中心の北部と、キリスト教徒などが多数の南部(現在の南スーダン)を分断支配し、両者に「遺恨」を醸成させた。英国からの独立後は、北部を中心とする政府と南部の民族連合との内戦が続いた。一九七〇年代に原油の埋蔵が確認されたことも、内戦を激化させた。二〇〇三年には、西南部で「ダルフール紛争」が勃発、約二百万人が死亡、約四百万人が難民となった。
 一一年十一月には南スーダンが分離・独立後したが、南北間、さらに南北それぞれでも内戦が続いている。南スーダンでは、大統領派と副大統領派が争っている。大きな原因は、南北スーダンの国境線画定と、南部の油田資源をめぐるものである。
 こうしたなか、国産安全保障理事会がスーダン政府(当時)に対する制裁決議を行い、〇五年にUNMISの派遣が始まった。この派遣は、従来の国連平和維持活動(PKO)の「原則」とは異なり、「当事者」であるスーダン政府の同意がないままのものであった。
 内戦が収まるはずもない。

スーダン干渉強めた米国
 これを主導した米国は、アフリカ第六位の埋蔵量を持つスーダンの資源を狙った。紅海に面し、スエズ運河から「アフリカの角」への中間に位置という、地政学上の重要性も考慮した。
 スーダンの原油採掘では、一九九〇年代にはスーダン国内の企業が支配的影響力を占めるようになったが、原油を発見した米多国籍大企業シェブロンなどは、これを覆すことを狙った。米国は、反政府組織のリーダーを米国内の陸軍基地で訓練し、内戦をあおった。スーダンの政情不安定化が、資源収奪に有利と踏んだのである。ブッシュ政権は、スーダン政府を、イラクなどに次ぐ「先制攻撃の対象」として指定した。南スーダンの独立には、こうした策動が少なからず影響している。
 米国は次第に、中国けん制のための手段としてスーダン問題を利用した。
 中国は九〇年代後半から、スーダンのインフラ建設に多額の投資を行っていた。
 米国は、「人権」をタテに「中国がダルフールの虐殺を黙認している」と難クセを付けた。二〇〇七年には、上下両院議員が、中国によるスーダン政府への支援を止めるよう迫った。当時は北京五輪の開催直前であり、米国はダルフール紛争を理由に、「五輪ボイコット」世論をたきつけて中国を揺さぶった。
 米国は、南スーダン産の原油を、従来の北スーダン経由ではなく、南隣のケニア経由で輸出するパイプラインを建設する計画も持っているとされる。
 昨年七月、首都ジュバでの大規模戦闘後、米国はまたも国連をたきつけ、内戦勢力への「先制攻撃」を可能とする決議を採択した。UNMISは「平和維持」の建前すら投げ捨て、軍事介入機構としての本質をあらわにさせたのである。

米戦略支える自衛隊派兵
 日本政府は、一二年以来、十一次、のべ約四千人の自衛隊員を南スーダンに派遣している。〇八年に調査団を派遣したのは麻生政権だったが、本格的派兵に踏み切ったのは、野田・民主党政権である。この決定の数カ月前の六月、日米安全保障協議委員会(2+2)は、日米の「共通戦略目標」の一つとして、「PKOにおける日米協力」で合意している。
 派遣された自衛隊の当初の主要任務は道路補修や医療支援だったが、昨年末には、安保法制に基づく「駆けつけ警護」「宿営地の共同警備」の任務が付与された。これは戦闘行為、南スーダンへの軍事介入への参画そのものである。
 安倍政権は、任務付与時、「治安状況は比較的安定」などと強弁してきたが、このデタラメぶりは「日報」で暴露された。安倍政権は「法的な意味での『戦闘』はない」などとき弁を弄(ろう)している。
 従来から二転三転していた稲田防衛相の国会答弁は、ますます怪しい。自衛隊員・家族内が不安に思うのは当然である。
 自衛隊の派遣と「駆けつけ警護」などの任務付与は、衰退する米国の世界戦略、とくに中国へのけん制を強めるものである。

アフリカ戦略も中国に対抗
 安倍政権は自衛隊派遣だけでなく、アフリカで米国の先兵として振る舞っている。
 自衛隊は、すでにソマリア沖での「海賊対処」を口実に、ジブチに基地を有している。
 昨年八月、安倍政権はケニアで第六回アフリカ開発会議(TICAD)を開催、「質の高いインフラへの投資推進」などをうたった「ナイロビ宣言」を採択、三年間で三百億ドル(約三兆円)を投資することを約束した。南スーダンにおいては、トヨタ自動車系の豊田通商が、パイプライン建設の予備調査を受注している。
 これらは、アフリカへの対内直接投資の四分の一以上を占める、中国に対抗したものである。
 安倍政権は、米国を支えるだけでなく、世界で市場争奪・資源争奪を演じている多国籍大企業の要求に応えようとしている。
 安倍政権は、国力以上に背伸びして中国に対抗しようとしているが、「火中の栗」を拾うものである。この危険性は、現地情勢の悪化で早くも白日の下にさらされた。粋がる安倍政権とはいえ、本格的戦闘ということになれば、「安全」をうたってきた手前、政権が危うくなりかねない。この時点では、安倍政権も、そのような事態には国民世論が耐えられるとは思っていないであろう。
 対米追随の南スーダン派兵は、すでに破綻した。五月を待たず、即時の撤退を求めて闘わなければならない。       (K)


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