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2017年3月5日号 1面

共謀罪成立を許すな

 安倍政権は現在、「共謀罪」法案の閣議決定・国会提出を狙っている。過去三回も廃案になった希代の悪法を「テロ等準備罪」などと包装を変え、「二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックでのテロ対策の柱」と位置付けて成立をもくろんでいる。

権力の強力な道具に
 共謀罪についてはすでに多くの個人や団体から「話し合うだけで罪になる」「現在の治安維持法」などと反対の声が噴出している。まさにその通りで、これが成立すれば捜査機関が「犯罪を計画・話し合った」とみなせば実行しなくても処罰できる法律となる。立件せずとも嫌疑をかけて捜査できるわけで、理屈の上ではあらゆる監視・盗聴が合法となる。
 国民の批判をかわすため、政府は「一般国民は対象外」などと言い繕おうとしているが、完全な方便だ。国家権力が何を「犯罪」と見なすかは、まさにかれらのサジ加減次第だ。
 たとえば今年一月、埼玉県警は反原発団体が実施した福島ツアーを「参加者を有償で送迎したのは白タク行為」だとして団体メンバーを道路運送法違反(無許可経営)の容疑で逮捕した。同様の手法は昨年五月にも京都の米軍Xバンドレーダー基地反対運動の参加者に対しても行使されているが、移動の際のガソリン代を割り勘にすることなど国民生活の中では日常茶飯事で、デッチ上げも甚だしい。
 現行法下でもこのような不当がまかり通っているなか、共謀罪が成立すればさらに不当弾圧が容易になり、行使へのハードルはいっそう下がるだろう。政府や経済界にわずかな異議を唱えることもはばかられる危険きわまりない社会が到来することになる。
 こうした社会を多くの国民が戦前の治安維持法下の社会と二重写しだと懸念を抱くのも当然だ。
 治安維持法は戦前の一九二五年に成立した。一七年のロシア革命と国際共産主義運動の発展、国内では米騒動に恐れをなした支配層が思想運動・大衆運動弾圧の中心として導入した。
 当時の国会答弁等では「無辜(むこ)の民にまで及ぼすというごときのないように十分研究考慮をいたしました」と一般人は対象にしないと説明、また思想取り締まりの懸念に対しても「実行に着手するものを罰する。決して思想にまで立ち入って圧迫するかとか研究に干渉するということではない」と弁明、「同法は伝家の宝刀に過ぎぬ、社会運動が抑制されることはない」などと国民に対し「安全・安心」をアピールしていた。しかし実際には共産主義者の言論や活動だけでなく、政府批判はすべて弾圧・粛清の対象となった。運動どころか自由な発言すらままなくなり、アジア太平洋戦争への道が舗装されることとなった。二回の改悪で最高刑は死刑にまで引き上げられた。四五年の敗戦後廃止されるまでに検束・勾留された国民は数十万人、生命を奪われた者は氏名が特定できるだけで五百人余りにのぼった。
 安倍首相は「一般の方々がその対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討している」「国民の思想や内心まで取り締まる懸念はまったく根拠がない」「実行の準備行為があって初めて処罰の対象」などと説明するが、驚くほどよく似た戦前の実例を見ても絶対に信用できるものではない。「小さく生んで大きく育てる」ではないが、つくってしまえば運用次第でどのようにでもするだろう。危険な同法成立を絶対許してはならない。

日米同盟強化の一環
 まさに戦前・戦中の治安維持法を彷彿(ほうふつ)とさせる共謀罪だが、当時と異なる側面もある。共謀罪が米国の要請で導入され、米国のアジア戦略に沿って中国などと軍事的に対峙(たいじ)する際の道具として行使されようとしている点だ。
 共謀罪導入の議論が始まったのは二〇〇〇年に行われた国際組織犯罪条約の委員会非公式会合からで、米国から日本とカナダに要請があったと言われている。それ以降、日本政府は「共謀罪がないと国際組織犯罪条約を批准できない」との姿勢を続けている。
 昨年九月には、「共謀罪法案再提出の見通し」との新聞報道を見た米国のキャロライン・ケネディ駐日大使(当時)が金田法相と会談、ケネディ氏は「大変勇気づけられた。できることがあれば協力する」などと上機嫌だったという。米国がいかに共謀罪成立を望んでいるかをうかがい知ることができる。
 米国にとって、台頭する中国を抑え込んで世界的な覇権を維持するためには日米同盟強化が必要で、その手立てとして日本に集団的自衛権の行使を可能とする安保法制化、沖縄県名護市辺野古の新基地建設着手や垂直離着陸輸送機オスプレイの配備をはじめとする在日米軍再編への全面協力、自衛隊の軍備増強と南西諸島への重点配備、海外派兵拡大、武器輸出三原則の事実上の撤廃、国家安全保障会議(日本版NSC)創設、原子力発電所の再稼働、中国をけん制するための諸国歴訪など、さまざまなことを実行させてきた。
 一三年に成立した特定秘密保護法もその一環で、米国が安全保障に関する情報を日本と共有強化するための「条件」として求めていたものだ。これは国家機関を引き締める性格のものだが、共謀罪はいわば国民を引き締めるもので、米国とともに戦争を遂行する上では欠かせない。

危機に備え弾圧強化へ
 米国の要請だけではない。今後の世界的な経済危機に伴う動乱の時代に備え、支配層自身が治安維持と弾圧強化の必要性を痛切に感じているからでもある。
 リーマン・ショック後、各国支配層は危機の切り抜け策として膨大な資金をつぎ込み、大銀行を頂点とする多国籍大企業を救済してきたが、労働者をはじめとする人民には数々の犠牲が押しつけられた。危機による失業や賃金低下はいうに及ばず、「財政危機」を口実とする増税や社会保障制度改悪、労働法制改悪などで、その攻撃はいちだんと激化している。
 米国のトランプ新政権誕生などの例をみるまでもなく、各国人民の不満は現在のところ移民などマイノリティや自国外に向いてもいるが、それらの不満がいつ政府へと集中し、労働運動など人民の闘いが激化し反政府運動へと転化しないかと、各国支配層は脅えている。そのため、高まる人民の不満を監視し、抑えつける策動を強めている。米国では「テロ対策」を口実に臨時法として定めた「愛国者法」を恒久法とし、同法の下で特定の個人や企業活動への監視、図書館記録の閲覧などに血道を上げている。
 共謀罪も、米国の要請というだけでなく、わが国支配層が「秩序」を維持するために欲している。レーニンが言うところの「軍事監獄」化させるための策動だ。
 労働者・労働組合は、「日米同盟強化」に反対して、国の独立と国民大多数のための政権をめざす闘いの一つとして、共謀罪に反対する運動を強めなければならない。
 現在、新聞労連や民放労連でつくる日本マスコミ文化情報労組会議が共謀罪の国会提出に反対する声明を発表している。反対の運動に取り組んでいる労組も多い。日弁連や日本ペンクラブなど各界各団体からも反対の声が上がっている。与党内を含む保守層にさえ、懸念の声が広がっている。
 これらをさらに広げ、発展させる、強力な国民運動が求められる。先進的労働者・労働組合にはその闘いの先頭に立つことが求められている。    (N)


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