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2017年3月5日号 2面・解説

2017年度予算案

際立つ国民負担増と大軍拡

 二〇一七年度政府予算案が二月二十七日、衆議院本会議で自民、公明などの賛成多数で可決し、参議院に送付された。国民にいちだんと負担を求める一方、多国籍大企業に奉仕し、日米同盟強化のための軍備拡大を進める予算である。憲法の規定により、年度内の成立は確実となったが、闘いは続く。国民生活の悪化に加え、森友学園問題などでも窮地にある安倍政権を追い詰め、打ち破らなければならない。


 一七年度予算案は、一般会計で九十七兆四千五百四十七億円と、過去最大の規模である。衆議院本会議で可決され、参議院で二月中に本予算の審議に入るのは十八年ぶりという早さとなった。
 だが、予算案の内容は、わが国の進路と国民生活・国民経済の利益に相反するものである。

社会保障制度はさらに改悪
 国民生活に身近な社会保障費はいちだんと圧縮される。
 年金や医療、介護などの総額は約三十二兆四千億円で、予算中で最大の割合を占めている。だが、高齢化による「自然増」分(概算要求段階で六千四百億円)をさらに一千四百億円も圧縮(一・六%増)、国民にツケ回しする。これは、一五年に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」に基づく措置である。
 社会保障制度における国民負担増の内容は、七十歳以上の高齢者の高額療養費の負担増(二百二十四億円)、七十五歳以上の後期高齢者医療制度の保険料軽減措置の縮減(百八十七億円)、六十五歳以上の療養病床入院時の光熱水費負担増(十七億円)など、高齢者への負担押しつけがさらに進む。介護保険でも、一定の所得以上の人の利用料が三割負担になる。いずれ、低所得者にも負担を押し付けるための「アリの一穴」である。
 「働き方改革」関連では、労災対策費が三百六十八億円と、何と七三%も削減された。「能力評価制度」普及には、三十九億円が計上された。事実上、ごく一部の労働者を除いては賃下げになる制度の普及に予算を付けたに等しく、「国の支援による賃下げ」である。
 深刻な保育士の処遇改善対策は五百四十四億円だが、全職員平均ではわずか二%の改善にとどまる。介護人材の処遇改善も月額平均一万円程度で、低賃金と過酷な労働条件を改善するにはあまりに不十分なものである。
 さらに、消費税増税の先送りを口実として、低所得者への介護保険料の減額や低年金者対策の給付などの実施が延期され続ける。鳴り物入りの、返済不要の給付制奨学金の対象者は、「住民税非課税」「自宅外通学」「高い学習成績」など基準がきわめて厳しく、国民と学生生活の実情にふさわしくない。
 他方、三大都市圏環状道路、国際コンテナ戦略港湾など、多国籍大企業の国際競争力を向上させるための大型公共事業は着実に実行される。福島第一原発事故の賠償・除染のための費用(二十一兆五千億円)の一部にも支出され、事故責任者である東京電力を救済、電気料金として国民への転嫁を容認する。二十八兆円の「経済対策」の目玉でもあるリニア中央新幹線には、財政投融資から総額三兆円が貸し付けられる。
 地方政策では、地方交付税制度に「トップランナー方式」が導入され、算定基準にさらなる格差が持ち込まれる。
 他方、研究開発減税など、大企業への大盤振る舞いは続く。トヨタ自動車は、一五年度で九百四十億円もの研究開発減税となっているのをはじめ、多くの研究費を使う自動車や製薬企業ほど利益を得ている。一五年度からの法人税引き下げも続き、安倍政権下での五年間で、大企業は五兆円近くの利益を享受している。

同盟強化支える大軍拡
 一方、防衛費は総額五兆一千二百五十一億円(前年度比七百十億円増)と、五年連続の増加、三年連続での過去最高額となっている。
 その内容も、新型潜水艦の建造(七百二十八億円)、垂直離着陸機オスプレイ(三百九十一億円)やミサイル防衛(BMD)用迎撃ミサイル(百四十七億円)、ステルス戦闘機F (八百八十億円)や空中給油機(二百九十九億円)の購入、滞空型無人機(グローバルホーク)導入の準備経費(百六十八億円)、米海兵隊をモデルにした「水陸機動団」(仮称)の創設などである。これら武器の支出は数年の「分割払い」(後年度負担)であるため、将来にわたっての負担はさらに多額である。
 こうした軍拡は、集団的自衛権の行使にともなう安全保障法制を前提にしつつ、台頭する中国に対抗するためのものである。トランプ米政権の要求を先取りするかのように、米国からの武器輸入額を増やし、在日米軍駐留経費も増額(一千九百四十六億円、二十六億円増)されている。沖縄県民の意思を踏みにじっての、名護市辺野古への新基地建設(五百三十六億円)も継続・本格化される。米空母艦載機の山口県岩国基地への移駐にも九百二億円を支出する。
 さらに、大学などでの兵器関連技術開発を支援する「安全保障技術研究推進制度」に、前年度の一八倍もの百十億円を計上した。
 中国をけん制する外交を支えるべく、政府開発援助(ODA)は二年連続で増額された(五千五百二十七億円)。高速増殖炉「もんじゅ」に代わる新たな高速実証炉の開発のための予算も計上され、対米従属の資源・エネルギー政策が継続・強化されようとしている。
 一月末に成立した一六年度第三次補正予算案にも、一千七百六十九億円もの防衛費が計上されていた。安倍政権による、対米追随の軍拡には際限がない。

さらに危機は深刻化
 総じて、二十九年度予算は国民に犠牲を押し付ける一方、米軍需産業を中心とする多国籍大企業に奉仕し、日米同盟強化のための軍拡を進めるものである。
 安倍政権が誕生以来、実行してきたアベノミクスは、大企業や資産家、外資を大いに潤わせはしたが、国民生活をいちだんの苦境に追い込んでいる。消費税増税は二度にわたって延期に追い込まれるなど、「デフレ脱却」どころではない。日銀の緩和政策は、購入できる国債の枯渇が迫り、限界に達している。結果、安倍政権は軍需産業への大盤振る舞い(経済の軍事化)を中心とする財政出動策しか、頼れる方法をなくしている。一七年度予算案はこうした苦境を示してもいる。
 一七予算案によって、国民生活はさらに深刻化し、病気になっても医師にかかれない状況となる。老後はさらに不安なものとなり、「下流老人」があふれる。さらに来年度以降には、「かかりつけ医」以外を受診した場合の窓口負担増、さらに消費税の再増税などが予定されている。国民への負担押しつけには際限がない。外交・安全保障では、わが国は「対中国」の矢面に立たされ、アジアで孤立を深め、偶発的戦争さえ招きかねない。
 他方、わが国の財政危機はさらに深刻なものとなる。
 一六年度第三次補正予算は、歳入を一・七兆円も下方修正し、一・九兆円の国債増発を余儀なくされた。今回の一七予算案も、歳入の三五%は赤字国債で賄われており、「国際公約」であった二〇年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化は不可能になっている。
 ここに、さらに「トランプ津波」が襲いかかり始めている。
 トランプ大統領は二月二十八日、議会演説で、諸外国に「公正な貿易」を求めるなどと述べた。トランプ政権が、日本に自動車や農産物などの通商上の要求だけでなく、財政出動による内需拡大、軍事費拡大を求めることは確実である。日本は財政政策の自主性をますます奪われ、米国の国内経済再建に協力させられる。財政危機を筆頭に、国民経済の危機はいちだんと深まろう。
 日米首脳会談で、安倍首相は「米国の雇用にも貢献する」と述べた。まさに売国奴としての態度表明である。
 わが国の財政はますます危機的状況となる。負担増に対する国民の不満はいちだんと高まらざるを得ない。アジアとわが国の平和もますます危うい。
 安倍政権を打ち倒し、独立・自主で、国民大多数のための政権を樹立する以外に、打開の道はない。
 現在、国会での政府への追及は、もっぱら「森友学園問題」に集中している。安倍政権を一定追い詰めてもいるし、重要な問題である。それでも、深刻な国民生活を打開するための方策は、もっと論議されてしかるべきである。(O)


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