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2017年2月5日号 2面・解説

共産党の当面の情勢認識の何点かについて(前)

米帝の暴露なく闘えない

菅井 玲一

 共産党の第二十七回党大会が一月十五〜十八日、開かれた。「野党共闘」を進め、「野党連合政権」の樹立をめざすことなどを決議した。しかし、この道に未来はない。労働者階級・人民は共産党への幻想を払拭し、その策動を打ち破り、新たな激動の時代に備えて闘争を準備しなければならない。共産党の当面の情勢認識の何点かについて批判する。


主要矛盾を明らかにせず
 共産党の国際情勢への認識は、第27回大会決議(以下、決議)の「世界の新しい動きと日本共産党の立場」に述べられている。
 ここでは「世界の構造変化」という言葉が使われているが、問題は中身である。その内容は、以下のようにまとめることができる。(1)核兵器禁止条約の国際交渉など「核兵器のない世界」への動きの前進、(2)東南アジア諸国連合(ASEAN)など「平和」のための地域共同体の前進、(3)米国の軍事的覇権主義の大破綻、格差拡大とトランプ政権の誕生、(4)中国・ロシアの新たな大国主義・覇権主義への批判、(5)欧米での「格差と貧困の拡大に反対する幅広い市民運動」の発展ーーである。
 こうした説明でこんにちの世界を特徴づけることはできず、むしろ誤りである。
 国際情勢の全体像を述べるのであれば、まず、冷戦崩壊後の世界の「主要な矛盾」と、その変化・発展を明らかにすべきである。
 わが党は「米国を頂点とする帝国主義とその他諸国の矛盾」を主要矛盾であると考える。また、購買力平価ベースの国内総生産(GDP)で米国が世界第二位に転落するなど、米国の衰退と中国の台頭をみるに、米ソ冷戦崩壊後の米国単独支配から中国、ロシアを含む「特殊な多極化」へと移行したことを、こんにちの国際関係の特徴と考える。
 世界の主要矛盾を明らかにし、その変化・発展を総括・展望せずして、本来、「構造変化」などということはできないはずである。

危機を認めず、展望示せず
 トランプ政権の誕生をはじめとする情勢の激動は、経済的基礎、人民の「食い物の恨み」を根源としている。上部構造、政治・国際関係の背後にある「経済的基礎」を解明することが前提となる。
 ところが、共産党は資本主義経済の危機についてほとんど触れていない。驚くべきことに、二〇〇八年のリーマン・ショックを契機とする米国発の世界金融危機と実体経済への波及、さらに一五年夏の「中国ショック」以降の新たな世界経済の危機(安倍政権でさえ不十分ながら認めている)について言及がない。
 これでは、英国国民投票での欧州連合(EU)からの「離脱」、米国でのトランプ政権の誕生、さらには、共産党がいう「市民運動」の背景が理解できない。「世界のすう勢」も明らかにすることができず、長期的な見通しを得ることはできない。
 さらに、トランプ政権の誕生で、世界は各種の矛盾がいちだんと激化し、先鋭化する。米国内の階級闘争だけでなく、米国とその他の国など国家間矛盾も激化する、本格的な「戦争を含む乱世」である。ASEANなどの前進は、このような激動に対処し、帝国主義とさまざまな方法で闘おうとする中小国の努力と見るべきである。
 「米国第一」を掲げたトランプ大統領は、就任直後から大統領令を連発、中国をはじめ、移民規制や通商政策などで隣国メキシコや中東地域に新たな紛争のタネをばらまいている。自動車輸出や金融政策など、日本へのけん制は強まり、政府・財界はあわてている。
 衰退する米国は黙って歴史の舞台から退場しない。トランプ政権による内外政治は「歴史の巻き戻し」で、悪あがきである。他国と自国人民に犠牲を押し付けて「偉大な米国の復権」を狙い、世界支配を維持しようとするものである。米帝国主義は全世界の労働者、被抑圧民族、人民の共通の敵である。わが国の独立をめざす広範な戦線をつくって闘う好機でもある。
 だが、決議は、トランプ政権の誕生について「強い警戒をもって注視していく」とするのみである。トランプ大統領就任後の志位委員長のコメントでも「いっそうあからさまな覇権主義的政策を強めるのではないかという、深い危ぐをもたざるを得ない」と、微修正はあるものの、米帝国主義の分析も暴露もほとんどなく、闘いを呼びかけてもいない。トランプ政権からの圧迫が強まりつつあるにもかかわらず、国会での共産党議員の質問は、日米関係の全体を正面から取り上げず、移民規制など個別問題の「追及」に終始している。
 共産党は、政権入りしたさに、米帝国主義を美化し恭順を誓っているのである。これでは、米帝国主義の手先である安倍政権を暴露することもできない。
 他方、当面の米国の戦略は、世界支配を維持するために、中国へのけん制を強化することである。共産党は中国とロシア、とくに中国を「新たな覇権主義、大国主義」などと指摘する。共産党は、米国の中国けん制策を批判せず、客観的にはその策動に手を貸すことで、政権入りへのお墨付きを得たいのであろう。
 また決議は「市民運動」には言及しているが、資本主義先進国の階級闘争、労働者階級の歴史的な任務に触れていない。マルクス主義を捨てた共産党にとっては当然のことかもしれないが、労働者階級の力なしに、政治を変えられるはずもない。

安倍政権の性格を暴露せず
 決議は、安倍政権について「これまでの自民党政権にはなかった、突出した危険性をあらわにしている」などと批判している。他方で、「安倍自公政権とその補完勢力に、野党と市民の共闘が対決する、日本の政治の新しい時代が始まった」などと描き出し、安保法制廃止や「立憲主義」を「対置」している。
 「日本の政治の新しい時代」の根拠とは何か。共産党によれば、「新しい市民運動の発展」と、共産党の「政治的躍進」だという。ここから導き出される結論は、選挙における「野党と市民の共闘」で安倍政権を倒すというものである。
 だが、決議には、安倍政権が成立した背景やその階級的性格、狙いなどについてほとんど述べられていない。これでは安倍政権が何者なのか、その弱点も分からず、闘えない。
 安倍政権は、世界中に権益を有するわが国多国籍大企業の覇権的利益追求のための政治を行っている。
 ごく一握りの多国籍大企業のための政治でありながら、〇九年末以降、安倍政権が政権を維持できている根拠は何か。なぜ、歴代政権に比して高い支持率を維持できているのか。
 安倍政権は「経済優先」を唱えて登場し、アベノミクス、「三本の矢」を打ち出した。これによって、多国籍大企業を中心に、都市部を中心とする投資家などを儲(もう)けさせ、支持を獲得したことである。
 併せて、安倍政権は単純な対米従属ではなく、尖閣諸島問題や北方領土問題を宣伝、ときにはわが国の「独立」にさえ言及することで支持を一定、広げているのである。
 また、公明党が自らの支持者を欺きながら政権を支えていることなしに、安倍政権は存続できない。
 さらに、「賃上げ」などで連合中央をうまく取り込んだこと。日本維新の会の補完的役割。民進党をはじめとする議会内野党が政策的な対抗軸を提起できないことにも助けられている。
 安倍政権の弱さも見抜かなければならない。
 安倍政権の「自主」は、対米従属の枠を一歩も出ない「ニセの独立」にすぎず、情勢の発展によって暴露されざるを得ない。安倍政権の売国性は、集団的自衛権行使のための安全保障法制や沖縄県名護市辺野古への新基地建設など、米戦略に追随しての対中国けん制の強化だけでなく、国富を米国や外資に売り渡すアベノミクスによっても明らかである。
 もう一つの弱さは、「経済再生」を掲げ続けるものの「デフレ脱却」を実現できていないことである。物価上昇や営業不振、社会保障費などの負担増加などで、国民の生活はさらに厳しい。政府の累積債務は、景気対策などでますます深刻の度を増している。
 わが国の破局はいちだんと切迫している。今後、トランプ政権からの為替、通商、安全保障などでの圧迫が強まり、安倍政権は立往生を余儀なくされる。支配層内部を含め、対米関係をめぐる矛盾が深まろう。
 世界資本主義の新たな危機を抜け出そうと、支配層は世界的に労働者人民に襲い掛かってくる。労働者階級は、国際政治でも国内階級闘争でも、本格的な闘争を余儀なくされる。備えなければならない。
 日本共産党の見解に惑わされてはならない。

※編集部中:見出しを改めました。


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