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2016年12月5日号 6面

人心をたぶらかし、財界のための
都政を進める小池知事と闘おう


日本労働党
東京都委員会委員長 
中尾 哲則

 「都政大改革」を掲げた小池知事が登場してはや四カ月が過ぎた。出だしの百日間は、築地市場の豊洲移転を延期し、東京五輪会場にも待ったをかけ、さらに待機児童問題についても補正予算を組むなど、人びとの耳目をひく問題に絞って取り上げるといった狡猾(こうかつ)な演出を凝らした。それは、石原元知事の任期途中での辞任に猪瀬・舛添両知事のカネがらみの辞任が続き、都政に対する不信と怒りを募らせていた都民に期待を抱かせ、高い支持を呼んだ。
 しかし十一月に入って、豊洲移転を前提とした築地市場問題も決定を先延ばしし、宙ぶらりんのまま長期間放置される仲卸業者にとっては死活問題となっている。最大の責任者である石原への追及も結局回避した。待ったをかけたはずの五輪会場についても、森・東京五輪組織委員会会長の軍門に下り、「大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹」ではないかといった批判が出るなど、パフォーマンスの欺まん性が次第に暴露されている。
 就任後百日目に打ち出した政策や十二月一日の所信表明演説で、小池都政が誰の利益のために何をしようとしているか、その階級的な、あるいは政治的な性格はより明らかになっている。さらに小池都知事が誕生した経過と、その後の国際情勢激変という環境変化のなかで見ると、その限界も含めて浮き彫りになってきた。
 小池都政の基本的な狙いは、石原以来推進し猪瀬・舛添へと引き継がれたものの、抵抗勢力やさまざまな「参入障壁」のために果たせなかった金融大資本・多国籍大企業のための「国際金融都市・東京」の実現で、そのための「特区」活用による規制緩和、法人税減税などの財政改革、都庁・政治改革である。激動する世界で生き残りに必死となっている支配層の負託に応え、日本の人口の一割、国内総生産(GDP)の二割を占め、企業利益の過半が集中する、国家権力の足元、首都・東京で安倍政権の「成長戦略」の突破口となろうとしているのである。小池知事は安倍の内外政治に沿いながら、それを補完する政治勢力を形成しようとしている。
 だがこんにち、トランプ米次期政権の誕生で世界は一つの転換点を迎え、経済危機はいっそう深まるだろう。小池都政は欺まんを弄(ろう)しながらも階級的性格をむき出しにし、これまでの都政とアベノミクスの下で窮乏化した都民各層にいちだんと犠牲を強いる、貧富の格差を拡大する政治である。
 小池都政の政策を挫折させ、都民大多数の手に都政を奪取しなければならない。首都・東京の労働運動の役割、都政奪取に向けた戦略的な闘いの重要性は、これまでにも増して大きくなった。
 また、小池の狙い、本質を暴露せず、小池与党のようにふるまい、都民の闘いをそらす日本共産党の犯罪的な役割を批判することはきわめて重要である。

1 小池都政は、金融大資本と多国籍企業のための政治の徹底
 「都民ファースト」は、東京都が厳然たる階級社会であることを覆い隠す欺まんである。われわれは、知事が都民のどの階級の利益を第一に考えた都政を進めようとしているのか見極めなければならない。
 戦後都政の長い経過の中で、一つの転換点となったのは石原都政の登場である。石原は「激化する都市間競争に勝ち抜き、日本経済を力強くけん引する世界に冠たる国際都市」東京の建設をめざし、その具体化に狂奔した。東京圏をアジアの中心都市として整備することは、厳しい国際競争にさらされているわが国多国籍大企業・金融資本が何よりも求めたことであった。
 この石原都政、そして基本的に猪瀬・舛添知事に引き継がれた「東京改造」は都民に何をもたらしたのか。一つは、東京を金融投資・金儲(もう)けの対象に変えてしまったことである。三メガバンクを中心とした金融、製造業をはじめ、商社、流通、情報通信などの非製造業も本社機能を集中させながら、東京は多国籍大企業の拠点都市として整備された。リーマン・ショック以降はさらに海外展開を進め、地方の富を収奪し、地域経済を破壊、地方で食えなくなった多くの若者、労働者が毎年十万人以上も東京に移り住んでいる。一極集中が加速したことで、大多数の都民にとっては「住み続けられない」まちに変貌し、首都・東京は富める者と貧しい者との「階級分裂」が深刻化した日本最大の格差社会になったのである。
 これまでの都政下で増大した、生活を脅かされ将来に希望をもてない都民大多数の不安と怒り、ぶざまな都政に対する都民の不信を小池は「都民ファースト」と言ってかすめ取ったのである。
 だが、そうして都政を奪った小池がめざしているのは、石原以来の金融資本、多国籍企業のための都政の「徹底」である。
 十一月十一日の会見では、二〇二〇年の東京五輪に向けて「国際金融都市・東京」を実現し、現在五%にとどまっている金融業の対GDP比を一〇%に引き上げ、GDPを三十兆円押し上げる、そしてこれがラストチャンスだとも言っている。そして、これまでの石原らの改革では、一部の地場産業、中小企業などを基盤にした都議会自民党の抵抗と「障壁」があって進まなかったので、今度は海外の金融機関関係者も入れて規制撤廃、法人税減税を進めようというのである。「国際金融都市・東京のあり方懇談会」にはロンドン金融街の元市長や、モルガン・スタンレー社長などの参加が決まっている。都民の財産を、外資の簒奪(さんだつ)にゆだねるということだ。さらに、トランプ米次期大統領が、法人実効税率引き下げや金融規制緩和の政策を打ち出していることに対して、「東京が何もしないことのほうが恐ろしい」と国際的な都市間競争に打ち勝とうと意気込んでいる。
 こんにち、資本主義は末期症状となって、米英などの先進国での金融危機が頻発、リーマン・ショック時には巨大金融機関の損失を政府債務として、結果的に各国の国民に犠牲に押し付け、さらに金融機関は垂れ流しの資金で巨万の富を得て、貧富の差が著しく拡大している。英国の欧州連合(EU)離脱も米国での政変も、その中で起こった。
 小池の都政は、まず法人税を減税し、その分財政のシワ寄せを他に回すということである。さらに特区を使った規制緩和で、従来の中小企業、零細業者の営業を圧迫する。東京の金融化、外資導入で、都民生活は豊かになるどころか、危機のふちに追いやられる可能性さえある。
 どの面下げて「都民ファースト」と言えるのであろうか?

2 小池は、安倍政権の亜流、補完勢力にすぎない
 小池の都知事奪取の手法は、小泉元首相が「自民党をぶっ壊す」として、抵抗勢力を敵に仕立てたのと同様である。
 小池は、安倍政権の経済政策が三年半経ってすでに限界となり、ほぼ手の打ちようがなくなった状況下で手を挙げ登場した。おそらく「安倍後」を狙っているのであろう。都議会に改革グループをつくり、自公の都議団とは対峙(たいじ)しようとしているが、基本政策やよって立つ階級的基盤は安倍政権と同じで、「アベノミクスを加速」させると言い、「国際金融都市」構想も「日本再興戦略二〇一六」に忠実に沿ったものである。
 小池は知事就任直後に「都政改革本部」を設置、この特別顧問の筆頭に橋下前大阪市長の下で労組攻撃の中心役を担った上山信一を据えた。もともと関市長時代の大阪市改革で上山らを送り込んだのも小泉元首相だった。したがって、改革本部の陣容も都知事選前から準備されていたと見るべきである。
 安倍政権に残された国内経済対策は、二十八兆円(真水では三兆円ほど)の財政政策、財政投融資を使ったリニア中央新幹線、それに東京オリンピックでの投資効果ぐらいである。小池と一定の連携をしている大阪維新の会の松井知事が「大阪万博」誘致と言いカジノ法を通していくのも、大都市部での開発、経済活性化しか手がないからである。それさえ容易ではない。そして、ますます都市と地方との矛盾は拡大する。
 トランプ新政権の下、わが国はさらなる軍事負担を求められ、これまで以上に米国の先兵として使われ、「対中国」の真正面に立たされるであろう。また、財政出動や市場開放なども強要するだろう。この結果、安倍政権は対米従属政治の限界をさらし、支配層を含む国民各層の矛盾と不満は激化する。支配層もある程度解決を迫られ、自主的傾向もさまざま進むことになる可能性がある。こうした下で、安倍首相は以前に増して欺まん的な「独立」を口にすることになろう。この状況下で小池らが橋下ら他の右派勢力と結びつきどのような役回りするか、目配りをしておかなければならない。
 だが、横田基地に対する態度など、小池は基本的に対米従属の安倍政権の補完勢力にほかならない。

3 野党、とくに小池与党と化した共産党
 都議会各党の態度はどうだろうか。これまでは知事与党であり、都知事選で小池と争った自民党、公明党はとりあえずの「協調」を装い、非難の矛先が自らに向かうのを避けている。
 民進党は蓮舫代表が小池知事と会談し「最大限の協力を」などとほめそやしている。
 共産党は「小池都政のもとで、都民の切実な願いを実現する運動と連携し、日本共産党が都政をリードする役割を発揮することが重要である」(第二十七回党大会議案)としている。
 民進も共産も、小池の改革姿勢を支持している。予算の復活折衝問題では民進、共産が小池を支持、自公が反対した。とくに共産党の態度は、都議選を控え、高い支持の小池知事にすり寄り、自党の議席を伸ばすために本質を暴露せず、政党として堕落しきった姿である。国政では当面は「野党共闘」だが、狙っているのは保革を含む政権入りであろう。この時点で「アベノミクス加速」「国際金融都市」実現を進める小池都政の実質的な与党となった共産党への批判を強めなければならない。

4 小池都政を打ち破り、都政奪取の戦略的闘いを
 まず、労働者にかけられる攻撃を打ち破らなければならない。
 すでに上山らは都政改革として都営地下鉄の民営化、公務員労組破壊の意図を明らかにしている。敵の攻撃は必至である。小池都政発足後初となる一六確定闘争の都労連や地公労集会では、「『都民ファースト』は『小池ファースト』だ」「『全職員の粛正』なんて許せない」といった怒りの声が現場組合員から上がっている。わが党は、こうした闘いを断固として支持する。
 次に、都政の具体的な政策によって、しわ寄せされ、犠牲を強いられる都民と共に闘うことである。小池都政は「二〇二〇年に向けた実行プラン」を年内に策定し、来年度予算案にも盛り込む準備を進めている。待機児童解消に向けた緊急対策としてすでに百二十六億円の補正予算を組み、高校生への都独自の給付型奨学金支給制度を創設することも決めている。しかし、これなどは予算全体から見ればきわめて微々たるもので根本的解決にはならない。これら一つひとつの政策は、都民生活と営業に異なった影響を与える。保育所の施設整備も企業のビジネスチャンスがからみ矛盾がある。これらの矛盾を突き、大衆の切実な要求を取り上げて闘うことだ。
 築地市場問題は、そもそも国際金融都市化のために、東京最後の一等地としての跡地利用への欲望から始まった。これまでの経過から見て、小池は一年半後の豊洲移転に落ち着かせるハラである。仲卸業者の経営は厳しくなっている。すぐさま豊洲移転を撤回し、築地市場の現地再整備に踏み切るべきである。
 首都・東京には横田基地をはじめ七つの米軍基地があり、総面積は東京ドーム約三百四十個分に及ぶ。さらに「横田空域」の問題もある。来年には垂直離着陸輸送機オスプレイの配備も強行されようとしている。小池都政との闘いの重要な課題である。
 そして、これらの課題、切実な都民の要求を小池都政に向け、力を蓄えながら、次の都知事選挙で小池を打ち破るために労働運動が小池と闘うこと鮮明にし、都政を変える広範な都民運動の中心として役割を果たせる政治的実力をつけるよう呼びかける。
 労働運動が軸となって中小商工業者、首長、地方議員のネットワークなど広範な都民各層の統一戦線をつくることである。連合東京はこの間、猪瀬、舛添知事を支持し、その選挙も強力に進めてきた。この総括が求められていると率直に言わなければならない。
 労働党東京都委員会は、わが党自身の強化と拡大にいっそう努力しながら、労働者と中小商工業者をはじめ都政転換を願う政党、政治家、人士と共に闘っていく決意である。


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