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2016年12月5日号 2面・解説

行き詰まり深める安倍外交

「自主」の欺まん見抜き闘おう

 安倍政権はその誕生以来、対米従属で中国に対抗する「地球儀俯瞰(ふかん)外交」で、大企業や資産家をひきつけ、「強い日本」をスローガンに広範な人びとを欺いてきた。だが、経済政策におけるアベノミクスの破綻と併せ、外交でも各所で行き詰まりを見せている。支持率を維持してきた要因の崩壊で、安倍政権を打ち倒そうとする側にますます有利な情勢となっている。


 二〇一二年末に誕生した安倍政権は、「強い日本」を掲げ、経済政策でのアベノミクスに加え、旧民主党政権下で沖縄県名護市辺野古への新基地問題などで揺らいだ日米同盟を「立て直す」などとした。また、尖閣諸島問題や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の人工衛星打ち上げなどを最大限に悪用し、敵視と排外主義、ニセの「民族の旗」を振った。
 以降約四年、安倍政権は集団的自衛権行使のための安全保障法制と国連平和維持活動(PKO)での武力行使容認、武器輸出三原則の廃止、特定秘密保護法、などで中国へのけん制を強めた。インド、モンゴルなど中国周辺国との関係を強化、アフリカ大陸でも、「アフリカ開発会議」(TICAD)で多額の支援を約束するなど、進出で先んじる中国に対抗する地球儀俯瞰外交を進めた。
 安倍政権は、米国の意図を受け、韓国との関係改善にも腐心してきた。一五年十二月には、従軍慰安婦問題での「政府間合意」に達し、十億円の政府予算拠出を約束した。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への制裁も強化した。
 ロシアとは、安倍首相とプーチン大統領の会談が計十五回にも及ぶなど「信頼強化」を進め、北方領土問題での前進という「成果」をつくろうとしている。
 安倍政権による外交・安全保障政策は、米国の「アジア・リバランス戦略」に追随するものであると同時に、対米従属下でアジアの大国として登場することを狙う、わが国支配層の要求でもある。
 この結果、米国が衰退し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の発足など中国が台頭する世界の激変のなか、わが国は世界のすう勢に反し、孤立を深めることとなっている。末期のオバマ政権が日本の金融政策をけん制するなど、対日要求を強めることで、日米関係も雲行きが怪しくなっている。
 こうしたなかで、トランプ候補が米大統領選挙で勝利した。時を同じくするように、安倍外交のほころびは一気に拡大している。

トランプ勝利に慌てる
 安倍首相は、トランプ候補の当選に狼狽(ろうばい)して訪米、十一月十七日に会談した。
 首相はトランプ氏を「信頼できるリーダー」などと持ち上げ、日米同盟の再確認と、環太平洋経済連携協定(TPP)への態度変更を促そうとした。それでも、トランプ氏はTPPからの離脱を表明、真っ先に忠誠を誓って国際的にひんしゅくを買った安倍政権は、ものの見事につまづいた。安倍政権は「(TPPは)米国抜きでは意味がない」といい、何とか翻意してほしいと、日本での国内承認を急いでいる。TPPが米国のアジア戦略にそったものであるにもかかわらず、安倍首相は国会承認が「独立国」の証(あかし)であるかのように言いつくろってもいる。
 だが、これも「独り相撲」となる可能性が高い。
 さらに、トランプ政権は米軍駐留経費の負担や為替問題など、オバマ政権以上にわが国の負担を迫ってくることが確実である。
 駐留経費問題では、安倍政権は日本の「思いやり予算」負担の現状などを説明して「理解」を求めるつもりのようである。仮に「理解」は得られても、わが国のPKOへの参加拡大などの軍事的役割の強化と、米国製軍需品の購入拡大を中心とする軍備拡大要求は必至である。これは、日本を米国の世界戦略にますます縛り付け、アジアの緊張をいちだんと高めることになる。
 為替問題では、トランプ氏は選挙中から日本の「円安誘導」を非難していた。現在のところ、トランプ政権による財政出動への期待から「ドル高・円安・株高」となっているが、中長期に続く保証はない。国内への「企業回帰」による経済回復を求めるトランプ氏は、輸出拡大を狙った強力な通貨安競争を仕掛けること、あるいは日本市場への参入をもくろんで「内需拡大」を求めてることは十分にあり得る。内需拡大は、一九九〇年代以降の日米構造協議の際と同様、わが国の国家財政をますます悪化させることになる。
 日本は、安保防衛政策だけでなく、金融政策も財政政策も、対米関係の下でますます制約される。トランプ新政権の下、日米間の矛盾はきわめて厳しいものとなるであろう。

米日韓同盟も危機
 韓国の朴政権は朝鮮の「核・ミサイル」に備えるとして、米日との連携を強化し、先月には、一二年以来延期されてきた日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)も締結した。韓国は、中国の反対を押し切って、在韓米軍への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備も認めた。
 だが、大統領の友人による国政関与をめぐって、朴大統領は任期前の退陣を表明、さらに弾劾の瀬戸際となっている。大統領選挙の前倒しは不可避だが、野党は、慰安婦問題での「合意」やGSOMIAなどに反対してきた。仮に野党が政権奪還に成功すれば、安倍・朴両政権下での合意の数々が水泡に帰す可能性さえある。同時に、朝鮮を口実に、中国をけん制する意図で強化してきた米日韓同盟は大きな打撃を受けることになる。

領土での政権浮揚も危うい
 ロシアとの関係では、安倍政権は十二月中旬のプーチン大統領との日ロ首脳会談で「北方領土と平和条約締結」での「前進」を印象づけようとしている。これは、日ロ接近を強くけん制してきた米国の衰退と、政権移行期に入ることを見越して、周到に用意してきたものである。
 だが、プーチン大統領は「(領土交渉は)簡単なものとはほど遠い」とクギを刺し、さらに、択捉島・国後島に新型の地対艦ミサイルを配備するなど、北方領土への実効支配を強化している。
 これに対し、岸田外相は「注視していきたい」と述べるのみという弱腰である。安倍政権はことあるごとに「わが国の領土・領海・領空は断固として守り抜く」などと繰り返すが、実態はこれである。
 多額の経済支援と引き替えの歯舞諸島・色丹島の「二島返還」さえ難しく、ましてや、択捉島・国後島を含む四島の「日本帰属の確認」にロシアが応じることはない。安倍首相も、領土問題は「そう簡単な課題ではない」と認めざるを得ず、具体的前進が図れるかどうか、きわめて怪しくなっている。

欺まん暴露する必要
 このほか、経済外交も思うようには進んでいない。
 成長戦略の重要な一部として重視していた「インフラ輸出」では、インドネシアでの高速鉄道受注で中国に敗北したのに続き、ベトナムが内定していた原子力発電所の建設を中止し、日本からの輸出はとん挫した。米国への新幹線輸出も、先行き不透明さが増している。
 武器輸出でも、オーストラリアへの潜水艦輸出に失敗した。
 安倍政権による「断固として守り抜く」などの宣伝は、自公政権下で民族的課題が解決するかのように描き出す欺まんである。
 安倍政権は外交的成果、とくに日ロ首脳会談の「成功」を最大限に演出することで政権浮揚、あるいは解散・総選挙をもくろんでいる。
 外交上の「成果」を掲げて解散に踏み切り、勝利をめざす戦術は、古くは佐藤政権による「沖縄解散」、田中政権での「日中解散」という例がある。これらの保守政権は沖縄返還や日中国交回復という民族的課題の「解決」が図られたかのように宣伝したが、実態は、沖縄はいまだに米軍の軍事植民地であり、わが国の対中外交は米国に翻弄(ほんろう)され続けている。保守政権による民族的課題の解決には限界があり、対米従属の枠を超えられないのである。
 安倍政権は、ますます「ニセの独立」を掲げた欺まんで政権維持を図ろうとするだろう。
 労働者階級は民族的課題でも国民の最先頭で闘い、保守政権、現在では安倍政権による欺まん的な「解決」を暴露しなければならない。そうしてこそ、民族的課題における戦線で主導権を確保し、自らの政治的前進を図ることができる。(K)


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