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2016年4月25日号 3面・解説

経験のない連続地震で
熊本中心に大被害

 真に被災者のための復興を

 四月十四日から熊本県を中心に連続して大地震が起こり、熊本・大分両県を中心に多大な被害をもたらした。地震発生後十日以上が経ち、今後の市民生活と営業、地域をどう立て直すのか、復興が課題となっている。一刻も早い被災者、県民大多数のための復興が実現されなければならない。政府や県が誰のための復興を行うのか、今後その内容が厳しく問われなければならない。しかし現時点においても、被災者をよそに地震被害を自らの悪政推進に利用することにしか頭にない安倍政権の本性が露呈しており、国民的な怒りを集中させなければならない


経験のない連続大地震
 熊本県では十四日夜に起きたマグニチュードM六・五の前震では益城町で震度七を、そして十六日未明に起きたM七・三の本震でも益城町と西原村で震度七を観測した。震度七が観測されるのは一九九五年の阪神大震災以降では新潟県中越地震、東日本大震災だけで、同じ場所で二回も観測されたのは観測史上初めてだという。以降も震度六強が二回、震度六弱が三回観測されるなど大きな余震が連続して発生した。十四日から一週間で現地は七百七十回を超える絶え間ない地震に襲われ、大分県中西部でも連続した大地震が起こるなど、離れた地域で地震活動が活発化したことで「これまでに経験したことのない地震活動。さらに地震活動が広がる可能性も」と指摘する専門家もいる。
 この地震で、震災関連死を含む死者は一週間で六十人、負傷者は千二百人あまりにのぼり、避難者は九万二千以上。損壊した家屋は約八千六百棟で、崖崩れや土石流、地滑りが計七十八カ所で起きた。断水は熊本、大分、宮崎三県で計約九万一千戸。被災自治体は仮設住宅建設の検討を始めている。鉄道や道路など交通網にも多大な被害が出ている。JR九州は在来線の鹿児島線の熊本―八代間を再開した。八代駅で接続する第三セクターの肥薩おれんじ鉄道などを使えば博多―鹿児島中央間が鉄路でつながる。一方、九州新幹線の全面復旧時期は未定。高速道路も一部区間で不通が続き、復旧のメドが立っていない。
 まさに「熊本大震災」ともいうべき今回の地震が地域住民の生活や企業活動に与えた打撃は大きく、一刻も早い復旧・復興に国をあげて取り組むことが求められている。

被災地を突き放す対応
 しかし安倍政権は、これだけの被害に対しても他人事のように冷淡な姿勢を続けている。
 十八日に行われた国会答弁で、熊本大地震を受けて消費増税見送りの可能性を聞かれた安倍首相は「大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていくという基本的な考え方に変わりはない」と答えた。「熊本大地震は大震災級の事態ではない」と言ったも同然で、被災者の感情を考えるとあまりに無神経だ。
 また激甚災害指定についても、十五日に熊本県の蒲島知事が早期指定を求めていたが、国の財政支出を嫌ったのか、安倍政権はこれに応えず、本震後の十八日の国会でも「事務的な数字を積み上げていかないと法律的にできない」「指定が今日、明日、明後日ということになったとしても災害支援には何のかかわりもないこと」と突き放した。
 ちなみに、二〇一一年三月の東日本大震災の際には民主党の菅政権下で地震発生の二日後に激甚災害指定の政令が公布された。一三年七月に安倍首相の地元・山口県などで発生した豪雨災害の際には四日後に菅官房長官が「指定、復旧を支援する」「従来指定には時間がかかっていたが、できるだけ速やかに地元の要望に応える」と明言している。対応の差は明白だ。
 この安倍政権の「今日、明日、明後日ということになったとしても〜」という発言だが、これに対し閣内からは「激甚災害制度は、国民経済に著しい影響を与えるような激甚な災害から復旧するにあたり、自治体の財政負担を軽減するために、公共土木施設や農地等の災害復旧に必要な費用に関して国庫補助の嵩上げを行うもの。被災したり、避難所に避難したりしている人には今すぐ直接、関係はない」などと首相を援護する発言も出ている。
 しかしこれは大きな間違いだ。被災した自治体が復旧・復興を進める際にはカネが必要となるが、多くの自治体は自主財源だけでは立ち行かないので国からの補助が必要となる。激甚災害の指定を受けると補助率が格段に上がるため、自治体は安心して復興に着手できる。逆にいえば、指定を受けるまでは平時予算措置の範囲内でしか対応がでず、復旧に着手することが現実的に難しくなる。被災者にも、指定により、特別な条件で優遇的な融資が受けられたり、母子への特別貸し付けが受けられたりするなど、大きな安心につながる利益がある。
 つまり激甚災害指定は復旧・復興・生活再建に取り組む国の姿勢を示すことであり、被災自治体や被災者にとって指定が受けられるかどうかで安心感はまったく異なる。国・社会全体に与える印象も大きく左右し、復旧に向けた推進力は格段に変わる。
 いま政府がやるべきは、被災地を「がんばれ、少なくともカネの心配は要らない」と激励することではないのか。
 また、安倍政権は十八日に衆議院で環太平洋経済連携協定(TPP)特別委員会を再開させた。本来は被災地で陣頭指揮に当たるべき事態だが「TPPを一歩でも前に進めたい」という安倍首相の強い意向で強行された。現地ではまだ行方不明者の救援も終わっていないような状況で、米国やわが国財界の意に沿った策動を優先させた格好だ。
 これら安倍政権の態度は被災地を放り出したに等しい。国の最高責任者として失格であるだけでなく、人道にも反する悪行だ。

震災悪用ばかりに終始
 一方で安倍政権は震災を悪用することには余念がないようだ。
 前震の後の十五日には早やくも菅官房長官が「緊急事態条項」創設のための改憲について言及、「きわめて重く大切な課題だ」と憲法改正に意欲を示した。
 この緊急事態条項とは、「大災害や武力攻撃などによって国家の秩序などが脅かされる状況に陥った場合、政府などの一部機関に大幅な権限を与えたり、人権保障を停止したりする、非常措置をとる」ことを定めた規定。自民党は一二年に日本国憲法改正草案を提言したが、そこでもこの緊急事態条項の創設が提案されているが、これが通れば、政権は曖昧かつ緩やかな条件・手続きの下で「緊急事態」を宣言すれば、それにより三権分立や地方自治、基本的人権の保障を制限ないし停止でき、独裁体制を築くことができる。強権でいっそう露骨・暴力的に権力に物言う労働者人民を弾圧できるようになる。
 つまり菅官房長官は救援そっちのけで悪政推進のための宣伝に興じたわけだ。
 また、ここぞとばかりに災害支援活動に米軍の垂直離着陸機オスプレイを投入した。日本政府から要請があったという話だが、「自衛隊が持っているCH47ヘリの方が積載量が多く、固定翼を持ち着陸できる場所を選ぶオスプレイよりも機動性が高い。オスプレイの方が航続距離が長いといわれるが、今回は被災地の近くに自衛隊基地がある」という専門家の指摘もある。
 被災地に近い佐賀空港には、米アジア戦略に沿って自衛隊が購入するオスプレイの配備がもくろまれている。空港の地元からは根強い反対の声が上がっている。今回のオスプレイ投入はまさにオスプレイ宣伝以外の何物でもないのだが、そのあまりの露骨さにさすがに被災地や空港の地元から「震災を利用するな」との怒りが渦巻いている。
 さらに、震源域が九州横断的に拡大、地震が今後どのように広がるか予測がつかないもとでも、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の稼働を続けている。地震被害で新幹線、高速道路も不通で、過酷事故が起きた場合には避難に重大な支障が生まれる事態となる。住民の不安が広がるのは当然だが、原発再稼働を推し進めたい安倍政権は住民の不安をよそに稼働継続を強行している。

東日本大震災の例も
 東日本大震災後、歴代政府は復興のためとして一般予算と別に「復興予算」を計上、それを国民への所得税増税などで賄った一方、企業に対する復興特別法人税は前倒しで廃止した。その「復興予算」も、トヨタ自動車による愛知県内でのエコカー生産のための設備投資被災地以外にも使われるなど、その九四%は被災地以外に流れた。また「トモダチ作戦」を契機に日米共同戦略も進められるなど、「災害救援」を口実とした日米の軍事的一体化も推し進められた。
 今回の震災復興でも、政府や県が誰のための復興を行うのかが厳しく問われなければならない。米国とわが国財界の手先である安倍政権の着手する「復興」であればなおさらだ。(M)


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