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2016年4月15日号 2面・解説

マイナス金利でも効果なし

 アベノミクスは破綻の縁に

 日銀は一月二十九日、マイナス金利の導入を決めた。二〇一三年四月以来の量的・質的金融緩和と併せ、金融緩和政策はますます「異次元」のものとなった。金融政策決定会合でさえ、政策委員九人のうち四人が反対するほどの冒険的政策であった


追い込まれてマイナス金利
 安倍・自民党は「強い日本を取り戻す」などと言い、アベノミクスの「三本の矢」を掲げ、リーマン・ショック後の苦境にあった国民生活を改善するかのような幻想をあおって政権に返り咲いた。安全保障政策で中国へのけん制や朝鮮民主主義人民共和国への敵視をあおったこともあるが、安倍政権の高支持率を支えた最大の要因は、経済政策に対する「期待値」であった。だからこそ、安倍政権は折に触れて「経済最優先」を掲げ続けた。
 確かに、膨大な金融緩和政策による円安によって、多国籍大企業は大儲(もう)けした。財政出動も、大手建設業者を中心に恩恵を与えた。株価は政権成立後二倍に上昇し、投資家は大いに潤った。マスコミは「株価連動内閣」などとはやし立てた。
 だが、国民大多数には物価高や社会保障制度改悪が襲いかかったし、何より労働者にとっては、実質賃金の引き下げで搾取が強化された。アベノミクスは、膨大な富を国民から大企業・投資家へと移転させる政策である。
 それでも、国内総生産(GDP)の成長率は次第に頭打ちになったし、日銀の「物価目標二%程度」の目標も達成できず、デフレ脱却は果たせていない。
 当然にも、アベノミクスに対する国民の幻想ははげ落ちていた。
 ここに、昨年夏以来の新たな危機が襲いかかり、世界経済はいちだんの低成長に陥った。米国はようやく金利引き上げにたどり着いたが、「次の利上げ」の展望はない。購買力平価GDPで世界一となった中国は、膨大な過剰設備の後始末に追われている。欧州諸国も、景気後退や難民問題など難題続きである。
 アベノミクスは海外での利益を前提としているが、その前提は崩れた。
 さらに、参議院選挙が七月に近づいていた。
 安倍政権としては、「円安・株高」を再度演出し、多国籍大企業や投資家の支持をつなぎ止める必要性に迫られた。国家財政の「息継ぎ」も必要だった。
 日銀のマイナス金利導入は、このような「追い込まれた」状況において実施された。

逆に「円高・株安」に
 日銀の導入したマイナス金利は、「円安・株高」を再度確かなものとし、多国籍大企業、外国投資家に奉仕しようというものであった。大銀行の経営は揺るがないが、他方で地方銀行や信用金庫など、地域経済に密接な金融機関には打撃となっている。庶民はなけなしの預金をさらに奪われる。
 だが、安倍政権、日銀が狙った「円安・株高」に振れたのはわずか数日で、その後は「円高・株安」傾向が鮮明になった。
 世界経済の冷え込みがさらに鮮明となったこと、企業収益の悪化のほか、原油安による貿易収支の黒字化、米国の金利引き上げの後ズレなどが要因である。東京市場を左右する外国人投資家でさえ、アベノミクスへの期待値を下げ続けている。
 短期の相場変動はともかく、実体経済が上向く条件はない。
 実質賃金も上がらず、労働者をはじめ国民大多数の生活はますます厳しい。「経済好循環」は絵に描いた餅である。三月の政権支持率は、安保法制を強行可決した昨年夏以来、約半年ぶりに下落に転じた。不支持率は、二カ月連続の上昇である(時事通信)。

安倍政権は対応に大わらわ
 安倍首相は、相も変わらず「アベノミクスの暖かい風を全国津々浦々まで届けていく」などと言い、当面の選挙対策も含め、アベノミクスの破綻を取り繕おうとしている。
 成立した二〇一六年度予算では、年金生活者向けの「臨時福祉給付金」や「地方創生交付金」などで国民や地方の怒りをなだめようとしている。この予算執行の、秋前の前倒しも指示している。一六年度補正予算も行うようである。
 批判が高まった待機児童問題では、付け焼き刃の「詰め込み政策」でしのごうとしている。
 消費税再増税はできる環境にないため、外国の経済学者を招いてまで、再延期のための「世論誘導」と海外投資家の「説得」に努めている。環太平洋経済連携協定(TPP)の国会承認も、選挙への影響を恐れて延期の公算である。株価対策のための資金をつぎ込んだ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は膨大な損失を抱え、年金給付額の削減など、国民へのいちだんの犠牲転嫁も近づいている。安倍政権は、運用実績の公表を延期させて選挙への影響を回避しようと、姑息(こそく)な策動まで行っている。
 だが、安倍政権が打てる手は限られている。何より、国家財政の限界が近づいているからである。いつまでも国民をダマし続けることも、できはしない。
 政策の失敗は明らかなのに、政府は「海外経済の冷え込み」に責任を転嫁し、「政策は正しかった」と言い続けている。海外のリスクを織り込まない経済政策などあり得ず、言い訳にもならないものである。
 アベノミクスは完全に行き詰まり、成功の条件はほとんどなくなった。

「好循環」支える連合中央
 ところが、実現のあてがなくなった「経済好循環論」を支え続けているのが、連合中央幹部である。
 しかも、一六春闘では、「経営環境の潮目が変わった」(豊田・トヨタ自動車社長)などの財界の宣伝に乗せられ、賃上げ要求自身が低額であった。中小労組の方が大企業よりも賃上げ額がわずかに大きかったことをもって「大手追随からの脱却」「底上げ」などと言い、中核組合である金属労協(JCM)は「新しい春闘の枠組みが始まった」(相原議長)などと自賛している。
 中小企業労組の一定の奮闘があったのは事実である。だが、大多数の中小企業と大企業との賃金格差は依然大きい。非正規労働者であれば、なおさらである。
 程度の差はあれ、中小企業は大企業に支配されており、賃上げの原資でさえ、その支配の下で自ずと限られている。春闘での大手の相場形成力は、こうした産業の実態を反映している。
 それを無視し、「新しい春闘の枠組み」などというのは、大企業労組にとっては、ますます闘わなくなる口実でしかない。
 連合中央はTPPも「推進」という立場で、これまた、国民の反撃を恐れる安倍政権を助けている。
 安保法制など安全保障政策においても、安倍政権との対決を避けている。
 連合中央幹部は、行き詰まり、国民の支持も失ったアベノミクス、安倍政権を客観的に支える反動的な役割を演じているのである。
 先進的労働者、労働運動活動家は、連合中央幹部の制動を打ち破って、闘いを発展させなければならない。 (O)


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