ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2017年10月15日号 1面〜2面

安倍政権5年で
進んだ生活破壊

 今回の総選挙で争われるべき真の争点は二つである。
 一つは、アジアの平和、対米従属から独立・自主の外交に転換することである。切迫する朝鮮半島の戦争の危機をつくり出している元凶は米国である。安倍政権はそれに追随、加担して、わが国を戦争の淵に立たせている。
 もう一つは、安倍政権五年の間に進んだ国民生活の危機、財政危機をどう打開するかである。アベノミクスは多国籍大企業、大資産家に膨大な利益をもたらしたが、労働者の実質賃金は下がり、貧窮化と格差が広がった。経済低迷、円安によるコスト高などで経営を圧迫された中小商工業者の廃業、農家の離農に拍車がかかった。さらに消費増税、社会保障負担、給付の削減、医療・介護、教育費の引き下げが進められた。
 国家債務危機が目前に迫るなかで、安倍政権はさらなる大衆収奪、犠牲転嫁で乗り切ろうとしている。これを許すか、あるいはさんざん儲(もう)けてきた大企業、大資産家の負担で解決させるかが問われている。
 安倍政権はこうした国民生活の破壊を覆い隠し、「戦後二番目に長い景気回復」「政権発足以来の株高」「失業率は下がり、有効求人倍率は上がった」などと宣伝している。その一方で、マスコミは「実感なき景気回復」などとあいまいにしている。
 大多数の国民にとって実感があるわけがない。
 子育て世代に焦点をあてると、家計が実際に使えるお金を示す「実質可処分所得」では、この期間の消費税増税(二〇一四年四月から五%↓八%)、厚生年金保険料率の引き上げ(年〇・一七七%ずつ六年間)子ども手当の減額(月一・三万円↓一万円、年少扶養控除廃止)により、年収五百万円世帯では年約二十五万円、年収三百万円世帯で年二十万円、実質可処分所得が減っている計算になる(大和総研調べ)。勤労者の消費支出が年々減っているのは当然である。
 また、リーマン・ショックで犠牲を転嫁された労働者、とくに非正規労働者は今も苦しみ続けている。総務省の指導で市県民税、国民健康保険税などの徴税が強化され、滞納があると給料から差し押さえられ、滞納分だけで月に五〜八万円近く天引きされているケースもある。自営業者に対しても同様に徴税強化がすさまじい。生活保護費の削減、窓口での支給抑制、高齢者に対する医療、介護福祉も大幅に後退した。
 今回の総選挙では、こうした安倍政権で進んだ収奪と国民生活破壊の実態が暴露されず、野党の政策は、打開を求める切実な国民の実態をほとんど踏まえていない。
 安倍政権に対する国民の不満は充満している。労働者、農民、各層の人びとが、従事している産業、仕事、暮らしが成り立ち、人間らしく生き、子どもを産み育てられる賃金、社会保障、支援こそが求められている。
 以下に、介護職場、農業の現場からの通信を掲載する。

※可処分所得 税引き前の給与収入から所得税、住民税、社会保険料をひき、児童手当などの手当てを足したもの。実質は、それに消費税増税など物価上昇分を除いたもの。


介護職場にしわよせ 制度改悪で利用者、事業者は負担増
(兵庫県・ケアマネジャー、40歳代・女性)

 福祉用具の貸与・販売や住宅改修、居宅介護支援事業を行う会社でケアマネジャーとして働いています。正社員とパート計七人の小さな会社です。
 安倍政権下の五年間、介護関係で良いことは何もなかったとしかいえません。
 介護保険の利用料は二〇〇〇年の制度発足以来ずっと一割負担でしたが、一五年八月に一定の所得以上の人(単身世帯では年金収入等二百八十万円以上)の利用料が二割負担へと引き上げられました。これにより、私の担当している利用者さんの二〜三割で自己負担が増え、デイサービスを減らすなど利用を控えるか、あるいはより蓄えを減らして利用するなど、対応を迫られています。また、知り合いには特別養護老人ホームからの退所を余儀なくされた人や、特養に「入りたくても入れない」という人もいます。
 ケアマネや事業所としても、負担率の確認作業などに関する事務負担が増えました。その他にも新たに義務付けられた書類作成などにも時間が割かれ、本来は利用者さんの所に足を運ぶべき時間が削られたり、あるいは残業が増えるなどのしわ寄せが来ています。
 来年十月からは「福祉用具貸与価格の見える化を推進」として「福祉用具届出システム」が施行されます。国が福祉用具の全国平均貸与価格を公表したり、貸与価格に一定の上限を設けたりするのですが、これによってさらに事務負担が増えるうえ、商品価格が低い方に標準化されることは目に見えています。
 これら介護保険の制度変更は、要するに国の支出を減らすためという面が強く、事務負担の増大や価格引き下げに対応できる大きな事業所はともかく、私の職場のようなギリギリの経営を続けている小さな事業所には厳しい制約です。零細な企業を淘汰(とうた)するための措置なのではと勘ぐってしまいます。
 また、私の会社は直接影響を受けていませんが、一五年四月の介護報酬マイナス改定で事業者報酬が大幅に削減され、ここでも小規模事業所がより大きな影響を受けました。地域には廃業したデイサービス会社もあります。一方、改定で介護労働者の処遇加算が一部上がりましたが、友人のヘルパーは「ボーナスが下げられたので結局はマイナス」とこぼしていました。
 なお、私自身はこの五年間、給料は一円も上がらず、ボーナスも一円も出ていません。物価は上がったので、アベノミクスで実質賃金の下がった者の典型かもしれません。
 今年の五月には、改悪介護保険関連法が成立し、来年八月から一定所得以上の人の介護利用料が三割負担へ引き上げられることになります。利用者や事業所にとってさらに負担が増すことになります。このまま国民負担を強いるだけの政治を続けてよいのかという気持ちが強まっています。


大都市中心の社会が加速
(秋田県・農民、60歳代)

今年は不作
 今年は春から天候が悪くて不作です。ここは準稲作地帯で、私は二町歩ほどコメをやっていますが深刻ですね。例年は一ヘクタール九〜十俵の収量がありますが、今年はその六割ぐらい。日本全体のコメの作況指数は「平年並み」ですが、東北の北部がとくに悪いようです。
 そんな事情は現地に来なければ分からないと思います。今回のイモチ病の被害はある意味では人災です。コスト削減で、防除(消毒)も下でやるよりもヘリコプターでやることが多くなりました。見回りをせず、役所まかせ。それで被害も広がっています。
 不作だからといって、米価が上がるわけではありません。今年は昨年より下がると聞いています。

進む農地集約と離農
 それにここ四、五年ですが急速に離農が進んでいます。農業法人への集積が進んでいます。安倍政権になって農地集積を補助金で誘導する政策によってそれが加速しました。
 私の集落三十戸のうち、数年前までは十数戸あった農家が今は三戸になりました。農業をやめた人はわずかな年金で暮らしています。おそらく都会の人たちが思うほど、農村に農家が残っていないと思います。 不作のときにいちばん困るのは、農地を集約化して規模を大きくしているそうした農業法人です。農業法人は会計士、税理士を雇って、それこそ補助金を目当てに経営をやりくりしているわけです。
 地域では、田んぼの他、キュウリとかトマト、ネギ、枝豆とかやりなさいといわれているが、還暦すぎた農家になかなか転作はできません。その減反分も農業法人にお願いしている。地域の草刈りとか、環境保持とかも農業法人に頼らざるを得ないのが現状です。
 しかしさらに先をいうと、そういう農業法人でさえいつまで続くでしょうか。近くの農業法人は二百五十町歩やっていて、売上は一億円を超えていますが、いつ倒産するかわからない。政府の政策次第です。
 政府は企業農業に道を開く政策で、農民に法人化させ土地の集約をやらせておいて、経営難になったらいい条件のところを乗っ取るようなことが目前に来ているのかもしれません。JAの役員、職員などは農家の長男坊たちで、農家経営についてよく知らない。口は悪いがボンクラで、とても太刀打ちができないのではないでしょうか。

東京中心の社会。地方、農業は見捨てられている
 そういうことで、今のような衆議院選挙があっても、われわれ末端の農家、元農家を含めほとんど組織されていない。選挙に対する意識はまずないようなものです。
 政党、候補者でも昔のような保守、革新の対決はもうないし、私から下の世代にはまずそういう感覚がない。むしろ地域の選挙、市議選のほうが面白いぐらいです。三十歳代の人が次々に立候補して、いろんな町おこしのアイデアを出してくる。決して生活は楽になっていない。しかしその生活実態から問題意識で目覚めることがあまりにも少ないと思います。
 共産党などはその点、何度やっても「同じスローガン」が出てきて、誰も見向きもしないという感じですね。
 今回の選挙では、仕切り直しをした環太平洋経済連携協定(TPP)問題など一切出てこない、候補者ももう農家の票などあてにしていないという気がします。
 地方から見れば、東京の選挙なんだという気持ちです。維新が出てくれば大阪、今度は東京。安倍と小池の「二人羽織」みたいですね。日本は大都市を中心とした社会になって、それが極端になった、はっきりしてきたのが安倍政権ではないか。それを東日本大震災以降は痛烈に感じますね。


誰のための「農業の成長産業化」なのか
(福岡県・農民、50歳代)

 私の集落では、まだ農家が半分程度残っています。若い人が農家を継がないので、コメのほか、ナス、イチゴとかのハウス、施設園芸なども徐々に辞めています。近くの籾摺(もみす)り業者がそれらの農地を借りて受けて、二十〜三十町歩やっていますが、土地が荒れていますね。
 この地域では、土地集約が難しいこともあって、農業法人はあまり進んでいません。
 私自身は五軒ほどの土地を借りて二町歩、自分の田んぼを含めて三町歩やっている。
 小規模の農家、五反ほどの農家は、機械を持ってやるのなら成り立たない。その農家の土地を借りて、一定の規模で集約された私のような農家もそれも成り立たない。
 昨年は私は三・六町歩やって最終的な所得は十〜二十万円程度にしかなりませんでした。ただそのうち約四割は転作で麦、大豆をやっています。その収入の九割は補助金収入ということになっています。

農家の「数」が問題
 今喫緊の課題は、農業で食っていける農家が、ある程度の「数」として生き残れるかではないかと思います。中山間地では河川、水路の管理、荒れ草狩りなどの共同作業があります。地域に一定の人数がいなくては成り立たない。一人の農家が、これらの管理ができるのはせいぜい二〜三町歩だといわれています。大手業者がやっている農業法人などは、田植え、収穫の時だけ人を雇ってやりますが日常の農地の管理はできません。しかも人を雇うとそれにも補助金が出ます。
 町内には、野菜農家をやってある程度成功している比較的若い人が何人かいます。子供を二人大学にやって何とか飯も食えている。そういう農家の経営を研究して、農業収入だけで農家がやっていけるようなモデルをつくるべきです。そして、そうした農家の経営が成り立つように行政が手助けすべきだと思います。
 農業予算は二兆円あるといいますが、それを小さな農家までまんべんなく受けているのではないです。その前に基盤整理事業ということで土地改良区とか、農協、今は輸出振興だとかに使われています。

農家のくらしが成り立つ政策を
 福岡県の試算では、労働費を入れたコメの生産原価は一俵あたり二万八千円〜三万円、反収が八俵とすると、一反歩で二十四万円ほど、今年のコメの基準価格(生産者価格)は一万三千五百円程度だから十万八千円。差し引きすると、一反で十三万円、一町歩で百三十万円が赤字、その分だけタダ働きをしていることになります。農家の暮らしが成り立つためには、農業者戸別所得補償の一反歩一万五千円とか、七千五百円とかでは全く足りない。一桁違う計算になる。そして、これでさえ安倍政権になって半減し、今年から廃止になる。いかに農業が見捨てられているか分かります。
 ここまできた農業を成り立たせるためには、予算配分を変えて、まず農家のくらしが成り立つようにすることです。
 総選挙での農業政策は、ほぼないに等しいですね。自民党の「農業の成長産業化」「農作物の輸出促進」などというのは、我々の農業のレベルでは全然関係ないことです。よく福岡のイチゴ「あまおう」の輸出の話がよく引き合いに出ますが、「あまおう」の農家でさえ、そのほとんどが輸出と無関係ではないでしょうかか。商社や企業農業の利益のためでしょう。
 ここをもっと暴露するべきだと思います。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2017