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労働新聞 2017年5月15日号 投稿・通信

種子法廃止に関する懸念(1)

なぜ私は移住してまで
大豆を育てているか

兵庫県・農業 渡辺 伸江

   現在開催中の国会で、コメや麦、大豆の種子の生産や普及を都道府県に義務付けてきた主要農作物種子法(種子法)を廃止する法律が成立し、「日本の食料生産の土台が崩される」などの懸念が広がっている。同法廃止の問題点や影響、そして今後問われる課題などについて、兵庫県で大豆などの品種保存活動に取り組んでいる渡辺伸江さんからの通信を数回に渡って連載する。

日本の食文化に大豆不可欠
 私は五年ほど前まで東京の公立中学、私立定時制高校で家庭科の教師をしていました。
 日本には各地の風土に合った大豆が約三百種あります。また、大豆の加工品であるしょう油、みそは各地で生産され、日本の調味料の基本です。豆腐、湯葉、あげ、がんもどき、納豆、きな粉と、日本の食文化に大豆は不可欠です。
 一方で、大豆の自給率は七%(二〇一五年)しかなく、油などの原料となる油糧用を除いた食品用に限っても自給率は二五%しかありません。
 私は「日本の食文化を残すために、大豆の生産農家になることは意義がある」と授業で説明していました。なかには思いを受け止めてくれる生徒もいて、頼もしく思っていました。
 ところが五年前、米国主導で推進されていた環太平洋経済連携協定(TPP)に日本も参加せよという政府与党の動きが活発になってきました。TPPが施行されれば、農業も国内の法律や制度よりも多国籍企業や大企業の利益を優先され、大豆を含めた農業は衰退し、日本の伝統的な食文化の基本である大豆をさらに外国に依存することになる、また農薬や遺伝子操作(GMO)大豆の問題も含め食の安全も確保できなくなる、そういったことがことが懸念されました。
 現在、国内で栽培している大豆はすべて前の年に収穫したものを種にしています。二年前に収穫したものは発芽率が極端に悪くなるので、種を採るには毎年栽培し種を残し続けるしかありません。
 毎年日本の大豆を両手の平一杯でいいから残し続けていけば、社会の仕組みがどう変わろうが種を残せる、毎年育てて繋げていって種を残したい……しょう油、みそと日本の食文化を残したいという思いが深まりました。

次世代に継ぐ大豆育てたい
 種を次世代に引き継ぐまで私が大豆を栽培し続けると決意し、教師の仕事は天職と言っていいほど好きでしたが退職し、移住への準備を始めました。移住先は農を一から始めるのであれば放射能汚染が少ない西日本で、もともと好きであった兵庫県に絞りました。
 兵庫県立農業大学校の新規就農者研修、兵庫県楽農センターなどの研修を東京から通って受けながら移住先を探し、赤穂郡上郡町に移住し、地域の方々のご理解のもと農家として三反の農地も取得、無農薬・有機農法で大豆はもちろん、種を採ることができる野菜を数種類育てています。
 すでに大豆や他の野菜の種も代を重ねています。農地は神戸大学名誉教授の保田茂先生の有機農の研修を毎年受け実践し、微生物や小動物のいる豊かな自然な土になってきています。
 一五年には兵庫県の農業普及センター主催の保田ぼかしを使った有機農法で大豆を育てる勉強会を私の畑で行い、参加者と育てた無農薬有機大豆は生麹(こうじ)と自然塩でみそづくりまで行いました。
 また、農業普及員の方々の農業振興への熱い思いと日々農家を回る地味な努力で地域の農業は支えられていると私は実感しました。
 そんななか、種子法廃止法案が提出されました。外圧ではなく日本が自ら貴重な種を手放すのかと驚愕(きょうがく)しました。
 そこで、三月十日に国会内で行われた山田正彦・元農相が中心で担われている「日本の種子(たね)を守る有志の会」の勉強会に参加し、龍谷大学で種子システムなどについて研究されている西川芳昭教授と直接農水省の方々からの説明も受け、十三日の参議院農林委員会も傍聴しました。
 知れば知るほど、種子法廃止は農家だけでなく消費者である国民全体に多大な影響を及ぼすことが分かりました。    (続く)


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