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労働新聞 2016年4月15日号 投稿・通信

伊勢志摩サミットから見えてきたもの

県民の利益にならない

三重県・田村 宏

  わが県では、五月二十六、二十七日に迫った「伊勢志摩サミット」に向けて、テレビや新聞などを総動員してのカウントダウンが日ごとに騒々しくなってきた。
 世界各国からの来訪者への「おもてなし」や広聴広報PRなど各種キャンペーンが繰り返し行われている。先日も家族と大型ショッピングセンターに買い物に出かけたところ、サミットの公報ポスターや垂れ幕が下がり、店内では着ぐるみキャラクターPRチラシを配っている。まさに桜の開花とともにサミットの歓迎ムードも満開というところである。
 そんな県の観光協会の懸命な周知活動の一方で、「テロ対策特別警戒中」の立て看板の前で、警察官が買い物客に目を光らせる物々しい光景を見ると息苦しさを感じる。店内の着ぐるみPRとは異質のものとしか映らない。県北部の桑名市ではジュニアサミットが開かれるということで、近鉄と県警・消防によるテロ対策訓練を近鉄駅構内で実施している。爆弾や化学剤によるテロを想定した大掛かりな訓練となっている。
 またサミットの開催地である伊勢、志摩、鳥羽の各教育委員会は、小中学校の五月中の行事を自粛するよう通達を出した。すでに春の運動会や社会見学を取りやめた学校もあるという。「大勢の人が集まる行事はテロの標的になる恐れがある。児童生徒や校区住民の安全を考えての処置である」と説明している。いたるところに設置された監視カメラや全国から動員された警察官や警備車両の多さに、息苦しさや不安を覚える住民も多い。こうしたことはテロ対策に乗じた国民統制、国家権力の強化以外のなにものでもない。
 特に驚きを感じたのは、各市に「テロ対策○○市パートナーシップ」なるものが関係機関の協力の元に組織されていることである。朝鮮民主主義人民共和国のロケット発射やベルギー同時テロ事件を巧妙に利用した住民統制の恐怖政治を思い起こされる。
 今一つは、積極的にサミット誘致を進めた鈴木知事の政治姿勢が問われなければならないことである。すなわち二期目に入った鈴木県政が広範な県民の立場に依拠した政治がなされているかどうかである。
 先ごろ発表された「伊勢志摩サミットの経済効果」の中間試算に、その政治姿勢が如実にあらわれている。県内分が四百八十億円、県外を合わせると全国で計約一千七十一億円になるという。鈴木知事は「洞爺湖サミットを上回っている。誘致して良かったと思えるよう取り組んでいきたい。近隣県にも一定の波及効果があり、地方創生につながっている」と自信をのぞかせている。県内経済効果の産業別を見ると、道路整備やメディアセンター新設などの「建設部門」が約二百五十八億円で半分以上を占めている。会場の賃貸料などで「不動産部門」が三十六億円になるという。まさに土木建設業者に手厚い県政であることが見てとれる。しかも大手企業にその恩恵がいっている。
 ある中小建設業者の経営者は次のように言っている。「確かに仕事量は増えているが、われわれのような中小は工期も短くて人手がないので仕事はあっても受けられない。大手さんの孫請けぐらいでその恩恵はわずかでしかないよ」「いま心配なのはサミット後に仕事がなくなるのではないかということ」。こうした現場に直接肌身に感じている人たちにとっては、洞爺湖サミット後の経済の落ち込みを話す必要がまったくないことがよくわかる。
 鈴木知事のプロフィールを見ると「全国高速道路建設協議会副会長」の肩書きもあり、さもありなんである。いったいどちらを向いて県政を担っているのかが明らかであろう。
 わが家のテレビから「伊勢志摩サミットの歌」が流れている。サミットの成功を呼びかける歌である。ところで、こうした開催の通知や協力を訴えるPRは幾度となく眼や耳にするが、サミットの本質的な県内議論はないに等しい。これはまた如何なものだろうか。


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