労働新聞 2002年12月5日号 学習

マルクス主義入門

エンゲルス著(1880年)
「空想から科学への社会主義の発展」(3)

マルクスの2大発見、
唯物史観と剰余価値


エンゲルス(1820〜95年)

 今回は第2章を読んでみよう。この章では、マルクスの理論はどうして「科学的」なのかが、説明されている。
 これまで学習してきたように、空想的社会主義は絶対的真理を頭の中で追い求めるものだった。しかし、マルクスは現実の階級闘争、資本主義の経済関係を研究し、自然、人間社会、思考の一般的な運動法則、発展法則を見い出した。エンゲルスは「マルクスによる2大発見、唯物史観と、剰余価値による資本主義的生産の秘密の暴露によって、社会主義は1つの科学となった」と述べている。
 この章では「唯物史観」と「剰余価値」が簡潔に説明されている。「弁証法」とか「形而上(けいじじょう)学」という耳慣れない哲学用語にとまどうかもしれないが、この章を読めば理解できると思う。言葉にたじろがずに、読み進んでみよう。

★2つの思考方法★
 私たちが自然、人間の歴史、私たち自身の精神活動を考察する場合に、2つの思考方法が存在する。
 私たちが事物を見る場合、まず目の前に現れるのはいろいろな相互作用が限りなくからみあった全体の姿である。そして、私たちはそのものの運動、移行、関連に多くの関心を払う。この素朴ではあるが、本質上正しい世界観は古代ギリシア哲学のものの見方であり、弁証法と呼ばれる思考方法だ。
 しかし、これでは全体の姿を構成している個々の事物を説明できない。また、個々の事物を知らない限り、全体の姿も明らかにならない。これらの個々の事物を認識するためには、それらを独立したものとして取り出して研究しなければならない。こうした思考方法によって15世紀後半以降、自然科学は大きな進歩を遂げた。
 この方法は事物を個々バラバラにとらえ、静止した不変のものとしてとらえるという習慣を残した。この考え方が自然科学から哲学に移されたために、それは偏狭な形而上学的な考え方をつくりだした。
 形而上学的な世界観は、個々の物にとらわれてその連関を忘れ、それらの存在にとらわれてそれらの生成と消滅を忘れ、それらの静止にとらわれてそれらの運動を忘れるのであり、ただ木だけを見て森を見ない思考方法である。
 形而上学は遅かれ早かれ限界に突き当たり、この限界から先は1面的な偏狭な抽象的なものとなり、解決できない矛盾に迷い込んでしまう。
 ここで登場したのがドイツの哲学者ヘーゲルで、彼は弁証法を思考の最高形態として復興した。しかし、ヘーゲルは事物とその発展は、世界そのもの以前にどこかにあらかじめ存在している「理念」が模写として現れているものと考える観念論者だった。彼もまた、解決不可能な矛盾に悩むことになった。
 従来の観念論がまちがっていることがわかるにつれて、唯物論に進んだ。現代の唯物論は、歴史を人類の発展過程と見るのであり、この発展過程の運動法則を発見することをその課題とした。

★唯物史観の登場★
 資本主義が発展する中で、歴史観に決定的な方向転換を引き起こす衝突が始まっていた。1831年にはフランスのリヨンで最初の労働者の蜂起があった。38年から42年には最初の全国的労働者運動であるイギリスのチャーティスト運動がその頂点に達した。プロレタリアートとブルジョアジーの階級闘争がヨーロッパの先進諸国の歴史の前面にあらわれてきた。
 資本と労働との利害は同一であるとし、自由競争は広く一般に調和と国民福祉をもたらすと説くブルジョア経済学は、事実によって、ますます手厳しく化けの皮をはがされた。
 労働者と資本家の階級闘争の激化は、従来の一切の歴史を新たに研究し直す必要性を生み出した。その結果、従来の一切の歴史は、原始時代を除けば、階級闘争の歴史であったことが明らかになった。
 そしてこの闘争しあう社会階級はその時代の経済的諸関係の産物であること、そのときどきの社会の経済的構造がその現実の基礎であり、歴史上の各時代の法律制度や政治制度はもちろん、そのほか宗教や哲学やその他の観念様式などは結局、この基礎から説明すべきものであるということが明らかになった。いまや観念論はその最後の隠れ家である歴史観から追放され、唯物論的な歴史観=唯物史観が生まれた。それは従来のように人間の存在をその意識から説明する方法ではなく、人間の意識をその存在から説明する方法であった。

★剰余価値の秘密★
 唯物史観によって、社会主義は歴史的に成立した2つの階級、プロレタリアートとブルジョアジーとの闘争の必然的な産物としてあらわれた。
 社会主義の課題は、できるだけ完全な社会体制を完成することではなくて、これらの階級とその対立抗争を必然的に発生させた歴史的な経済的な経過を研究し、この経過によってつくりだされた経済状態のうちにこの衝突を解決する手段を発見することとなった。
 また、資本主義的生産様式の下での労働者階級の搾取の本質は何なのか、どうしてそれが発生するのかが解明された。 これは剰余価値の暴露によって成し遂げられた。資本家は労働者の労働力に支払ったものより多くの価値をこの労働者から取り出していることが分かった。この剰余価値こそが有産階級の手中に、不断に増大する資本量を積み上げるものであることを証明した。こうして、資本主義的生産と資本の生産との関連が、科学的に説明された。         (Y)      


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