20020215

図書館から見える風景

近江一郎


 私は「完全失業者」のパーセンテージのポイント上昇に貢献している存在だが、そんな人間にとって都合のいい隠れ屋が公立図書館だ。図書館通いをしてもうかれこれ7、8年になるだろうか。最初は新聞、雑誌などいろいろ目を通せる便利さに誘われて行くうちに、図書館の良さも分かってきた。
 そのうち小学生の子供も本が好きなようで、地域の図書館にいっしょに行くようになり、ついでに単行本やハウツーものなど、買うほどでもない本はもっぱら図書館から借りるようになった。
 そこで気付いたのは、地域にもよるが、一目で「同業者」(失業者)であると分かる風体の人がここ数年めっきり増えたことである。この国がいかに抜け道が見えない、厳しい不況と失業におおわれ、暗雲たれ込める国であるかが、この図書館の様相でも分かる。
 われわれ「同業者」にとっては図書館はまったくありがたい。無料で新聞や多くの図書が読めて、時間をつぶすにはもってこいの場所である。何よりも夏は冷房、冬は暖房完備で、特に路上生活者にとっては天国のような憩いと安どの場所でもあるだろう。
 そんな彼らはどこの図書館がいつ休館日で、また夜何時まで開館しているかの情報をもっている。彼らはどこかの図書館で顔を合わせているらしく、暗黙の連帯感があるようだ。しかし、図書館ではそんな平安な状態ばかりではないのが現実だ。路上であまり熟睡できなかった彼らは、心地よい暖房と読書の催眠効果で気持ちよい眠りに誘われる。その姿を図書職員からとがめられて、ひともめする光景をちょくちょく見かける。  一方、公立図書館は、われわれ「同業者」のみならず、行き場のない高齢者も多く姿を見せている。ある一人暮らしの高齢者は、家に戻っても寂しいから病院後の時間つぶしに、人が大勢いる図書館に来ると…。またある女性は家では嫁とそりが合わず孫もなつかず居場所がなく、さりとて映画や喫茶店などお金のかかるところには行けない。ここでは気兼ねなく趣味の雑誌を読んだりして過ごしている。この時間がいちばん幸せだと…。  ここにこの国の悩めるもうひとつの大きな課題がある。急速に少子高齢社会に突入している現状に、効果的な施策が打てない現内閣。それどころか、高齢化対策に関する福祉施設でも、職員の削減で満足なサービスも提供できなくなり、職員自体も過重労働で多くの本当の痛みを被っているのである。

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 このように図書館は現代の2つの大きな弱者、切り捨てられる者としての失業者と孤独な高齢者の最後の駆け込み寺、あるいは制限されながらも自由空間となっている現実がある。それを知ってか知らずか、利用者数が年々増えていることをデータで掲示している図書館もある。
 しかし、その利用者たちのカウントは、同時に失業者や孤独な高齢者のカウントであり、それは現政府、内閣の無策への声なき批判のカウントでもある。そのことを内閣をはじめ政治、行政に携わる者すべてが知るべきである。
 小さな公立図書館の閲覧室から、日本の政治、政策の現状があぶり出されるように見えてくる。